フランス、パリのチュイルリー庭園西南端にある国立美術館。モネ畢生(ひっせい)の大作『睡蓮(すいれん)』で名高い。美術館の建物は第二帝政期(1852~70)にオレンジの木を越冬させる温室「オランジュリー」として建設されたものである。1階の二つの楕円(だえん)形をした大きな部屋の壁は、8点の巨大な帯状パネルからなるモネの『睡蓮』が飾られている。晩年のモネが86歳で他界するまでジベルニーの屋敷で制作し続けた大作である。1922年、オランジュリーでの展示方法を示した図面を承認したモネは政府に自作を寄贈する契約を結び、27年モネが亡くなった半年後に『睡蓮』の壁画が正式にオランジュリーで展示された。2階に上ると印象派後期からエコール・ド・パリの傑作を集めたワルテール‐ギヨーム・コレクションを見ることができる。ポール・ギヨームPaul Guillaume(1891―1934)はモディリアニ、スーチンらを世に送った画商で、ドランとも契約していたことで知られる。彼が早世すると、未亡人ジュリエット(通称ドメニカ)Juliette(1898?―1977)は、建築家で鉱山開発をも手がけた実業家ジャン・ワルテールJean Walter(1883?―1957)と再婚し、美術品の収集を続けた。ジュリエットは、ギヨームの遺志を尊重して、フランス政府にコレクションを譲渡することを決め、ジュリエットの死後、1984年から常設展示されている。
[吉川節子]
『吉川逸治編『ルーヴルとパリの美術8 パリの美術館』(1988・小学館)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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