カタ温度計(読み)かたおんどけい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カタ温度計」の意味・わかりやすい解説

カタ温度計
かたおんどけい

鉱山などにおいて労働環境の指標として用いるカタ度を測定するための特殊な温度計温度湿度および風速の3条件が総合して人体に及ぼす冷却効果の算定に用いられる。35℃と38℃の二つだけの目盛りをもつ一種アルコール温度計で、毛管の上部にも球部を備えている。カタ度を測定するには、まず温度計全体を約50℃に温めて感温液の一部が上方の球部にたまる状態にする。次に温度計を静かにつるした状態で示度が38℃から35℃まで下がるのに要する時間を測定する。温度計に記入してある検定値を測定した秒数で割るとカタ度が得られる。これは、温度が38℃から35℃まで下がる間に1平方センチメートルの表面積から、1秒間に空気中に放出される熱量、すなわち空気の冷却力をミリカロリーの単位で示した数字である。温度を38℃から35℃までに選ぶのは、その平均36.5℃が人体の体温に相当することによる。温度計の感温部(下方の球部)が乾いている状態で測ったものを乾カタ度、湿った布で包んで測ったものを湿カタ度とよび、それぞれ人体の乾いた皮膚、および汗などでぬれた皮膚からの熱の放散率を表す。ヒト快感を覚える湿カタ度は20程度で、これより低いと蒸し暑くなり、高くなると寒く感じる。イギリスの生理学者ヒルLeonard Hillが発明したもので、カタkataは下降を意味するギリシア語である。

[三井清人]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カタ温度計」の意味・わかりやすい解説

カタ温度計
カタおんどけい
katathermometer

人間の体感を測定するために考案された温度計。暖められた物体の冷却率が風速によって異なる性質を利用し,冷却率から測定する。温度計を約 40℃まで暖め,温度計の指示が 38℃の線から 35℃の線まで下がる時間をストップウォッチで読み取り,この時間と気温から風速を計算する。構造が簡単で,低風速で感度がよいのが特徴。寒暖の感じ方は体から単位時間に失われる熱の量によるため,温度計を体温近くまで暖めておき,これを外界にさらして冷却してゆく速度が体感を表すものと考えられた。今日では微風速計として用いられている。

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法則の辞典 「カタ温度計」の解説

カタ温度計【Kata thermometer】

ヒトの体温とほぼ同じ温度の物体から放出される熱量を測定するための温度計.本質的にはアルコール温度計で,比較的大きな感温部の上に肉厚の毛細管と補助球部を備えている.目盛は35℃ と38℃ の2本だけしかない(華氏温度を常用しているところでは100°Fと95°Fのものもある).アルコール糸の38℃ から35℃ まで低下するのに必要な時間を測定して,単位表面積から単位時間に発散する熱量を求めることができる.人体の一つのモデルとして用いるもので,坑内気象の労働に及ぼす影響の測定や,微風速の測定などに用いられる.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカタ温度計の言及

【体感温度】より

…これは着衣の状態や労働状況によっても違った値となる。このような体感温度を直接測定するものにカタ温度計があり,これは気温,風速,放射量,湿度の総合的な効果を放射量の指標にして測定するものである。【岡村 存】。…

※「カタ温度計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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