ラテン語で〈暗い部屋〉の意味。正しい読みは〈カメラ・オブスクラ〉。暗い部屋で,小さな穴を通して壁に外の景色が映し出されるという光学的原理はよく知られている。紀元前に中国の墨子やギリシアのアリストテレスによって知られていたといわれ,11世紀のイブン・アルハイサムの研究報告やレオナルド・ダ・ビンチの非公開のメモなどにも,その光学的考察の記述が見られる。はじめは字義どおり,暗い部屋の中で日食の観察や絵の下描きのために用いられたが,16世紀ころになるとピンホールの代りに凸レンズが装着され,17世紀に入ると現在のカメラの原型といえる暗箱型のカメラ・オブスキュラが完全な遠近法による絵を描くための“道具”として普及する。日本でも写真機が将来される以前に,杉田玄白や司馬江漢らによって〈暗室写真鏡〉〈写真鏡〉として紹介された。カメラ・オブスキュラの歴史は,単にカメラの原型というだけではなく,人間と映像の初源的な関係を物語っている。
→カメラ
執筆者:金子 隆一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…学生時代,バイロンやスコットにあこがれてロマン主義的な憂鬱(ゆううつ)な調べの叙事詩を作ったが,生来陽気な性格のベーツは,むしろ散文において自己にふさわしい表現形式を見いだした。すなわち,37年以後ヒルデブラントHildebrandの筆名で発表した10の短編を《カメラ・オブスキュラ》(1839)として出版した。さらに書き加えられて多くの版を重ねた本書は,風刺の精神をもってオランダの日常生活を生き生きと描写している。…
…写真を撮影するための装置。カメラの起源はカメラ・オブスキュラcamera obscuraであり,これは〈暗い小部屋〉という意味のラテン語である。すでに前3世紀の幾何学者ユークリッドは,暗い部屋の壁面の小孔を通る光線により外の風景が投影されることを認めていたといわれ,また11世紀ころにはアラビア人たちが天幕製のカメラ・オブスキュラを楽しんでいたという。…
…写真を撮影するための装置。カメラの起源はカメラ・オブスキュラcamera obscuraであり,これは〈暗い小部屋〉という意味のラテン語である。すでに前3世紀の幾何学者ユークリッドは,暗い部屋の壁面の小孔を通る光線により外の風景が投影されることを認めていたといわれ,また11世紀ころにはアラビア人たちが天幕製のカメラ・オブスキュラを楽しんでいたという。…
…しかし彼自身の考案とは書いていないので,この装置はその前からよく知られていたものと考えられる。また後にレオナルド・ダ・ビンチによって書き残されたメモのなかにも,〈カメラ・オブスキュラ〉の名がたびたび使われており,それが実在していたと推測される。そして同じイタリアの自然哲学者G.B.dellaポルタの《自然魔術》(1558)の記述では具体的に,カメラ・オブスキュラの絵画への応用を推奨している。…
※「カメラオブスキュラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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