カラシナ
からしな / 芥菜
brown mustard
[学] Brassica juncea Czern.
アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の一、二年草。中央アジアから中国にかけての地域の原産。アブラナやツケナ類に近縁であるが、葉の基部は茎を抱かない点が特徴。春に1~2メートルにとう立ちして、やや小形の濃黄色の十字花を開く。種子は黄色で球形、表皮にごく細かい網状の模様があり、表皮が平滑なアブラナと区別できる。栽培種としては、種子からからしをつくり、春先のとう立ちを食べるカラシナと、葉が大きく葉柄が多肉質で、漬物や煮物にするタカナがあり、分類学上は同一の種であるが、葉柄が多肉質かどうか、また、味や用途によって農業上は分けて扱われる。
中国における栽培は古く、『礼記(らいき)』に記録がある。日本では、古くは、カラシナとタカナに対する和名と中国名との対照がかならずしも統一されていなかったが、平安時代の『本草和名(ほんぞうわみょう)』には菘という字でタカナが記載されている。9月ごろから種子を播(ま)き、11月ごろから葉を利用する。開花は4月で、種子の収穫は6月になる。
[星川清親 2020年11月13日]
種子の粉末を香辛料とし、カレー粉やからし漬けなどに使う。カラシナの種子を粉にしたのが和からし粉である。葉には特有の香りと辛味があり、漬物や煮物にされる。とう立ちして、つぼみのついたころの塩漬けは美味である。なまの茎葉100グラム中には、カロチン2300マイクログラム、ビタミンC70ミリグラムを含み、鉄は1.7ミリグラムと菜類としては多いほうである。
[星川清親 2020年11月13日]
種子は直径1~1.5ミリメートルで、カラシまたは芥子(かいし)と称し、香辛料のほか薬用ともする。種子は配糖体シニグリンを含んでいるので、粉末にして温水を加えてこねると、酵素ミロシナーゼの作用で分解して特有の香りと辛味を生ずる。かつては皮膚引赤(いんせき)薬として泥状のものを皮膚に塗り、気管支炎、肺炎、神経痛などの治療に用いたこともある。欧米では、クロガラシBrassica nigra Koch、シロガラシSinapis alba L.(Brassica hirta Moench)の種子を同様に用いる。
[長沢元夫 2020年11月13日]
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カラシナ (芥子菜/芥菜)
leaf mustard
Brassica juncea(L.)Czern.et Coss.
栽培されるアブラナ科の越年草。春先にとう立ちした茎葉を漬物にして食べ,また種子をからし油やマスタードの原料とする。日本では《本草和名》にすでに記載され,古くに導入されていることがわかる。草姿は立性で葉数は少なく,若い葉や茎および葉の裏側などに剛毛を生じる。葉は長楕円形または卵形で,葉縁に切れ込みがある。葉色は緑褐色で花は小さく鮮黄色を呈する。土壌の適応性は広く,適湿地を好むので水田裏作での栽培に適する。耐寒性も比較的強いので,主に秋まきして晩秋または越冬後早春に収穫する。種子を生薬では芥子(がいし)という。配糖体シニグリンsinigrin(ミロン酸カリウム)を含み,加水分解によりイソチオシアン酸アリルallyl isothiocyanateを生じ,これが皮膚や粘膜を刺激する。香辛料として用いられるほかに,刺激,引赤,去痰の目的で,神経痛,肺炎などに局所に貼布外用する。また芥子の水浸剤は,皮膚真菌に対し増殖抑制作用がある。その他,茎葉にも適度の辛みを含むので,さわやかな風味があり,主に塩漬などの漬物の原料として使われる。カラシナは寒さにあたってからの収穫で風味を増す。また春先にとう立ちした花茎も柔らかく利用することができる。カラシナは東アジアで多くの品種が分化しており,ネカラシナ,キガラシ,セリフォン,銀糸芥(ぎんしかい),アザミナ,タカナ,多肉性タカナ,大心菜(だいしんさい)(ザーサイ)などが含まれる。
→芥子
執筆者:平岡 達也+新田 あや カラシナの野生種はセイヨウカラシナで,関東以西の都市近郊の河川敷や堤防を中心に帰化している。野生種であるがカラシナと同様漬物にして美味である。地中海沿岸域が原産地と考えられ,アブラナとクロガラシの交雑から生じた複二倍体の種である。カラシナと同様にマスタードの原料となるクロガラシB.nigra(L.)Kochはやはりヨーロッパ原産の植物で,種子は黒褐色で,褐色から明褐色のカラシナからは区別できる。
→アブラナ
執筆者:堀田 満
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カラシナ
《栄養と働き&調理のポイント》
アブラナ科の2年草で、春先に花茎をだして、黄色い花をつけます。花の形状はアブラナによく似ていますが、大きさはやや小さめです。葉にも種子にも辛み成分があるのが、この名の由来です。古くから中央アジアで食用とされ、わが国へは中国から伝えられたといわれています。
関西では「タカナ」と呼ぶことも多いようですが、野菜の分類では小型から中型のものをカラシナ類、中型から大型のものをタカナ類と呼んでいます。「ザーサイ」も種類は同じで、肥大した茎を漬けものにしたものがよく知られています。
○栄養成分としての働き
ピリッとした辛みは、シニグリンが分解してできるアリルイソチオシアネートという成分によるものです。シニグリンは消化を促進し、胃酸の過度な分泌(ぶんぴつ)を抑制するので、食欲増進、胃弱・消化不良や胃もたれの解消、胃潰瘍(いかいよう)予防に役立ちます。
また、がん予防の効果が期待できるカロテン、ビタミンC、Eを含み、鉄分、カルシウムといったミネラル類も豊富。貧血改善や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防に適した食品です。
茎や葉はおもに漬けもの、煮もの、おひたしに利用され、種子は調味料や防腐剤に使われます。胃腸の調子が悪いときは、刺激を抑えるために量は少なめに。
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カラシナ
アジア原産のアブラナ科の二年生の野菜。奈良時代末〜平安初期に中国から渡来。茎や葉にはあらい毛がはえ,根出葉はダイコンに似て切れ込みがある。種子,茎,葉はシニグリンを含み,辛味がある。葉を利用するもの,肉質肥大した根や茎を利用するものなど多くの栽培品種がある。中国料理で使われる搾菜(ザーサイ)もその一種。煮物,ひたし物,漬物とするほか,種子から芥子(からし)を作る。おもに漬物に利用されるタカナも広義のカラシナの一型である。
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カラシナ(芥子菜)
カラシナ
Brassica juncea
アブラナ科の越年草で,中央アジア原産。根生葉はへら形,長い葉柄があり,長さ約 20cm。葉面はしわがあり縮んでいるものもある。4月頃,茎頂に総状花序を出し,有柄の黄色十字状花をつける。中国や日本で古くから栽培される菜の一種で,葉や種子に辛みがある。この種子からカラシをつくる。
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カラシナ
[Brassica juncea(cernua group)].芥子菜と書く.タカナ(高菜)は変種の一つ.フウチョウソウ目アブラナ科アブラナ属の一〜二年草で,種子からカラシをとり,葉をカラシナとして食用にする.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のカラシナの言及
【アブラナ(油菜)】より
…主要な種には,次のようなものがある。(1)セイヨウカラシナBrassica juncea (L.) Czern. ヨーロッパ原産。最近,関西地方の河川敷を中心に大繁殖をしている二年草で,栽培されるカラシナの基となった野生種である。…
【アブラナ(油菜)】より
…このうち,キャベツは古代のギリシアとローマの人々にも知られていた。(4)カラシナB.juncea (L.) Czern.et Coss(n=18で,ゲノムAB) 英名はleaf mustard。B.campestrisとB.nigraの間の複二倍体に由来する。…
【アブラナ(油菜)】より
… このアブラナ類の所属するアブラナ属Brassicaは約40種からなり,北半球に広く分布している。この属には,アブラナ,カブ,ハクサイ,キャベツ,カラシナなど多くの有用植物が含まれ,葉や根は野菜や飼料作物として,また種子から良質の油がとれるので油料作物として重要であり,さらに観賞用として利用されるものもある。そのため多岐にわたって多くの栽培品種が発達しており,互いに近縁の植物とは思えないほどである。…
【タカナ(高菜)】より
…アブラナ科の一年草。西アジア原産の種子からマスタードをつくるカラシナは,中国で葉菜として多くの品種が育成されたが,タカナはその一つである。野菜としてのカラシナ類の栽培は古く,日本へは奈良時代~平安時代初期のころ中国から渡来したものらしい。…
【有毒植物】より
…ヒガンバナなどリコリンやシュウ酸を含む植物と同様に,水にさらせば無毒化する。カラシナなどアブラナ科の植物は体内でゴイトリンを形成し,甲状腺でのヨウ素の取込みを阻害して甲状腺腫多発の原因となる。こうした例や発芽によってソラニンを形成して有毒化するジャガイモの例を含めると,有毒植物の種類と範囲は複雑かつ広範となるが,社会の形態や食性の変化によって有毒植物の認識は変化する。…
※「カラシナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」