イスラム法に基づき,民事・刑事の訴訟に判決を下す裁判官。孤児・精神遅滞者の財産,モスク・ワクフの管理,近親に男子のない女子の婚姻契約書作成も職務に含まれる。イスラム法施行の責任はカリフにあり,そのため政府は国内各地にカーディーを任命するが,この原則が確立したのは7世紀末ごろで,それ以前にカーディーと称された者の多くは,地方公庫の管理者か戦利品分配の責任者,あるいは紛争の調停者(ハカム)にすぎなかった。アッバース朝カリフ,ハールーン・アッラシードは初めて首都にカーディー・アルクダート(大カーディー,初代がアブー・ユースフ)を置き,その後カーディー・アルクダート(イベリア半島ではカーディー・アルジャマーア)は司法行政の責任者となり,10世紀まではカリフの名において,それ以後は自らの名で全国のカーディーを任免した。行い正しい(アドル)ムスリムで,イスラム法学に造詣の深いことが任命の条件とされた。マムルーク朝ではスンナ派の四法学派を代表する4人のカーディー・アルクダートが置かれ,オスマン帝国ではハナフィー派の2人のカーディー・アルアスカルがこれに相当した。地方行政区画サンジャク(県)の下にいくつかのカダーqaḍā'(裁判区)が設けられ,各カダーにはカーディー・アルアスカルの任命するカーディー(日給150アクチェ未満)と,その推薦によってスルタンの任命するカーディー(日給150アクチェ以上)が派遣されたが,16世紀以降シャイフ・アルイスラームがカーディーの任免権を握った。
→裁判
執筆者:嶋田 襄平
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インドの手織綿布。カッダルとも呼ばれる。ガンディーはイギリス植民地期におけるインド綿織業衰退の問題をとりあげ,チャルカーによる手紡ぎ糸とともに,手織綿布の生産の復興を提唱した。彼はスワデーシーの観点から,また村落産業の育成のために,外国製や工場製の綿布に代わり手織綿布を生産,使用することを訴えた。
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…イクター保有によって農村を支配したマムルークは,その富を基礎に都市の経済を左右するほどの実力を備えていたが,軍人の支配権にはムスリムに対する裁判権は含まれないのが原則であった。シャリーアに基づく裁判は,各都市に派遣されたカーディー(裁判官)によって行われた。しかもこれらのカーディーは,裁判の業務を超えて地方行政に参画することもまれではなかった。…
…幾重にも監督を行えば弊害を防ぎうるというのがその信条であった。【宮崎 市定】
【イスラム】
イスラム初期のカリフや総督たちは,みずから裁判を執行したが,ウマイヤ朝(661‐750)の中期以降カリフは裁判官(カーディー)を任命して,各地の都市に派遣した。イスラムの法律制度では,原則として裁判は1人の裁判官によって行われる。…
…1905年に始まったスワデーシー運動はイギリス製品のボイコットを行い,工場制綿布の生産を促した。第1次大戦後には30番手以上の細糸(競争番手)生産が増加し,イギリス綿糸布の輸入代替が進行するとともに,M.K.ガンディーが奨励したチャルカー(手紡車)とカーディー(厚地手織綿布)はインド民族運動の象徴ともなった。この期にはまた工場制綿布の生産高が手織綿布の生産高を上まわり,両者の合計が輸入綿布量を越えた。…
※「カーディー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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