キマダラヒカゲ

改訂新版 世界大百科事典 「キマダラヒカゲ」の意味・わかりやすい解説

キマダラヒカゲ

鱗翅目ジャノメチョウ科キマダラヒカゲ属Neopeに属する昆虫総称。中型のジャノメチョウで開帳5~7.5cm。ヒマラヤ,中国西部,台湾から日本にかけて分布する。日本にはサトキマダラヒカゲN.goschkevitschiiヤマキマダラヒカゲN.niphonicaの2種が見られ,いずれも固有種として知られる。サトキマダラヒカゲは開帳5.5~7cm。翅の表面の黄褐色の筋がよく発達し,裏面も明るい。裏面の眼状紋は小さく円形でその黄褐色の輪には厚みがある。北海道から九州にかけて広く分布するが,佐渡島や屋久島のような離島からは未記録である。本州中部では標高2000mの高地帯にも見られることがある。食草のメダケ類やササ類のある雑木林にすみ,成虫樹液に集まる。暖地では年2回,寒地では年1回発生し,食草の根もとの落葉の中でさなぎのまま越冬する。ヤマキマダラヒカゲは開帳5~7cm。前種よりも色彩が暗色で,より寒冷地を好む。佐渡島や屋久島にも分布し,地理的な分化が進んでいる。食草はササ類に限られる傾向が強いが,地域によってはススキに発生することがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キマダラヒカゲ」の意味・わかりやすい解説

キマダラヒカゲ
きまだらひかげ / 黄斑日陰蝶
[学] Neope

昆虫綱鱗翅(りんし)目ジャノメチョウ科に属するチョウ。日本に産するこのネオペ属Neopeのチョウは長い間ただ1種と思われていたが、これは外観的に酷似した2種を混同していたことが明確となったので、現在ではキマダラヒカゲの和名は学術上には用いられない。その2種はサトキマダラヒカゲNeope goschkevitschiiとヤマキマダラヒカゲN. niphonicaである。両種とも北海道から九州にかけて分布するが、日本の多くの地域では前種は平地から低山地に、後種は山地にすみ分けるのが一般であるので、前記のような和名がつけられている。利尻(りしり)島、佐渡島、屋久(やく)島に分布するのは後種であり、前種は分布しない。はねの開張は両種とも55~65ミリメートル内外。両種とも寒冷地(たとえば北海道の山地)では年1回の発生(7、8月)、暖地では年2回(4~6月、7~9月)の発生。幼虫の食草はともにタケ類であるが、サトキマダラヒカゲがタケ、ササの類を食べるのに対し、ヤマキマダラヒカゲは主としてササ類のみを食べ、好みの範囲が狭い。ススキは地域によってはヤマキマダラヒカゲの食草となるが、サトキマダラヒカゲはこれを食べない。越冬態はともに蛹(さなぎ)である。

[白水 隆]


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百科事典マイペディア 「キマダラヒカゲ」の意味・わかりやすい解説

キマダラヒカゲ

鱗翅(りんし)目タテハチョウ科に含まれる2種。ジャノメチョウ科とすることもある。おもに低山帯に生息するサトキマダラヒカゲと山地に生息するヤマキマダラヒカゲがある。開張60mm内外,褐色で,黄色の紋がある。幼虫はササ,タケなどの葉を食べ,蛹(さなぎ)で越冬。成虫は年1〜3回発生し,樹液によくくる。

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