新聞が一定の世論を喚起することを目標に、紙面や組織を動員して、ある期間、継続的に行う言論・報道活動のこと。プレス・キャンペーンのテーマには、社会悪、政治の腐敗などで評価や価値判断の基準が入り乱れ、世論が動揺している問題が取り上げられやすい。新聞はプレス・キャンペーンによって、一定の主張を社会に広く知らせ、人々の意見や態度を変え、賛否について組織的行動を社会に定着させようとする。1930年代以降、ラジオ、テレビをはじめ各種マス・メディアが発達・普及するにつれ、それらを使って啓蒙(けいもう)的な運動やその運動を援助する活動が盛んになった。とくに広告活動の活発化に伴いキャンペーンということばが常用されるようになった。しかし、広告キャンペーンは宣伝者が主観的に好都合と考える世論をつくるための恣意(しい)的活動なのに対し、プレス・キャンペーンは社会的に必要な問題を事実を重視して取り上げるところに大きな違いがある。
日本の近代的新聞は明治初期の政党機関紙時代から始まるが、当時のプレス・キャンペーンは政党本位の宣伝色の濃いものだった。その後、福沢諭吉(ゆきち)、陸羯南(くがかつなん)、徳富蘇峰(そほう)、黒岩涙香(るいこう)など個性の強い論客による各種のキャンペーンが読者に歓迎された。とくに明治後期、島田三郎の『毎日新聞』(『横浜毎日新聞』の後身。現在の『毎日新聞』ではない)が展開した足尾鉱山鉱毒反対キャンペーンはプレス・キャンペーンの記念碑といわれる。さらに大正期には米(こめ)騒動前後の寺内正毅(まさたけ)内閣批判キャンペーンがある。欧米の新聞は独自の取材・報道活動を裏づけにしてよくプレス・キャンペーンを行う。とくに1970年代アメリカの『ニューヨーク・タイムズ』『ワシントン・ポスト』両紙が行ったベトナム戦争やウォーターゲート事件に関する政府・大統領批判キャンペーンは歴史的成功を収めた。
第二次世界大戦後、日本の新聞では60年代に公害問題、消費者問題などのキャンペーンが行われたが、「不偏不党」の編集方針、読者拡大の経営方針により、近年では、賛否両論が深刻に対立するテーマをあえて取り上げプレス・キャンペーンを行うことはしだいに少なくなっている。
[高須正郎]
『内川芳美・新井直之編『日本のジャーナリズム』(1983・有斐閣)』▽『ワシントン・ポスト編、齋田一路訳『ウォーターゲートの遺産』(1975・みすず書房)』
期日前投票制度は、2003年6月11日公布、同年12月1日施行の改正公職選挙法によって創設された。投票は原則として投票日に行われるものであるが、この制度によって、選挙の公示日(告示日)の翌日から投票日...
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
7/22 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新