昭和期の小説家,評論家,英文学者
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
小説家、評論家。明治36年6月26日岡山県に生まれる。東京帝国大学英文科卒業。在学中に同人誌『朱門』に参加、卒業後は『文芸都市』同人となる。1930年(昭和5)『日独対抗競技』で文壇に登場、同年短編集『恋とアフリカ』、評論集『主知的文学論』を刊行して、新興芸術派の有力な一員として注目された。1936年『文学界』に連載した『冬の宿』は、左翼運動退潮後の知識人の混迷を浮き彫りにしたものであった。戦争下の長編『風雪』(1938~1939)は、ファシズムに対する自由主義の立場からの抵抗を示した作品である。戦後は『黒い影』『おぼろ夜の話』(以上1949)などで敗戦後の知的青年の苦悶を描く一方、1953年(昭和28)、メーデー事件特別弁護人を務めるころからしだいに社会的関心を強め、反動的潮流に対して進歩革新の側から抗しようとする態度を貫いた。その間の著作として評論集『ヨーロッパ紀行』(1951)、長編小説『日月の窓』(1957~1958)などがある。ほかに英文学の翻訳も多い。昭和48年4月23日没。
[東郷克美]
『『阿部知二全集』全13巻(1974~1975・河出書房新社)』
作家,評論家,英文学者。岡山県生れ。東大英文科卒。1930年,国際色豊かなモダンな短編《日独対抗競技》,20世紀西欧文学の流れをくむ評論集《主知的文学論》をほぼ同時に発表して文壇に登場。36年,長編小説《冬の宿》で好評をうけたあと,《幸福》《北京》《街》《風雪》などの長編を続々発表。知的抒情に包まれた静かなヒューマニズムによって昭和10年代の青春と知識人の内面を描き,多くの読者を獲得した。戦後は自由主義者の立場に立って社会的,文化的に活躍する一方,《黒い影》(1949),《日月の窓》(1959)など,思想あるいは方法の面で注目すべき小説も残した。H.メルビルなど,英米文学の翻訳も数多い。
執筆者:曾根 博義
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1903.6.26~73.4.23
昭和期の小説家・評論家・英文学者。岡山県出身。東大英文科卒。1930年(昭和5)小説「日独対抗競技」,評論集「主知的文学論」などによって文壇にデビュー。第1次大戦後の西欧文学の流れをくむモダニズムの文学者として活躍。昭和10年代には「冬の宿」など多くの作品を発表し,自由主義的立場から知識人の内面を描いた。「白鯨」の翻訳などメルビル研究でも業績をあげた。
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