改訂新版 世界大百科事典 「クサノオウ」の意味・わかりやすい解説
クサノオウ
Chelidonium majus L.var.asiaticum(Hara)Ohwi
日本全土の人里付近の草地や石垣に生え,初夏に黄色の花をつけるケシ科の二年草。東アジアの温帯に広く分布する。草丈は50cm内外で,羽状に分裂する葉が互生する。全体的に粉白色を帯び,柔らかい。花は5~7月ころ,枝の先に散形花序となってつき,萼片2枚,花弁4枚,おしべ多数,めしべ1本からなる。花後,円柱形の蒴果(さくか)が細長く伸び,種子はアリによって散布される。茎や葉を切ると滲出(しんしゆつ)する橙色の液には,ケリドニンchelidonineなどのアルカロイドが含まれ,有毒。中国では干したクサノオウを白屈菜(はつくつさい)といい,アヘンの代用にした。和名については,この黄汁にちなんだ〈草の黄〉とする説,葉をもんで丹毒の民間薬として用いたことから〈瘡(くさ)の王〉とする説がある。
同属のヤマブキソウC.japonicum Thunb.は,ヤマブキに似た大きな黄色の花をつける多年草で,本州の山地の明るい林床に生え,やはり黄汁が出て有毒である。
執筆者:森田 竜義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報