改訂新版 世界大百科事典 「クニース」の意味・わかりやすい解説
クニース
Karl Gustav Adolf Knies
生没年:1821-98
ドイツの経済学者。W.ロッシャー,B.ヒルデブラントとともにドイツ歴史学派の創始者の一人。マールブルクに生まれ,マールブルク大学に学び,1846年同大学の講師となる。48年以降カッセル工科大学,フライブルク大学教授を経て,65年ハイデルベルク大学教授となり,96年まで同大学で教育・研究に専念した。マールブルク時代は歴史学と国家学を講じたが,師ヒルデブラントの影響を受けて経済学に転じ,スイス時代に著した《歴史的方法の立場からみた政治経済学》(1883)で歴史学派の立場を明確にした。すなわち,アダム・スミス学派の個人主義的・普遍主義的な経済学をコスモポリタニズムとして批判し,経済学説や政策は時代によって変化せざるをえないことを主張した。経済社会の有機体的性格およびその歴史相対的な性格を強調する点で歴史学派の立場を共有しているが,人間の自由意志をも強調するところに彼の独自性がある。また歴史的方法に必ずしもとらわれない幅広い研究活動を行い,《貨幣と信用》全2巻(1873-79)はその主要な業績である。歴史学派に批判的であったC.メンガーも彼には高い評価を与えている。
執筆者:間宮 陽介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報