興味,関心を同じくする生徒が集団をつくり,学校の指導を受けつつも,教科外の時間に自主的に文化・スポーツ活動を展開し,あわせて市民としての社会性を訓練しつつ,個性的発達を目ざす活動を,ひろくクラブ活動と呼ぶ。中等教育にあっては,課外の活動は古くからみられたが,近代的なクラブ活動は20世紀の中等教育の大衆化とともに発展してきた。19世紀のアメリカの中等教育にあっては,課外の活動は,秘密結社的であると同時に,中産階級への通路でもあった文学会literary societyのような学生の社交団体(フラターニティ)によって行われていた。ところが,19世紀末から第1次世界大戦にかけて,中等教育の大衆化の波のなかで,多種多様な青年文化がハイ・スクールにもちこまれ,開放的で民主的なクラブ活動が生徒によってつくられていった。学校当局は当初これに無関心であったり,弾圧的であったが,やがてその教育的価値を評価して奨励するようになり,第1次大戦後,ホームルーム活動や自治活動とともにこれを教育課程化curricularizeして,正規の時間を与え,単位認定を行うようになった。
日本の中等教育にあっては,クラブ活動は明治後年から自主的活動として,また指導者としての資質の訓練として組織されはじめたが,1909年の〈講演会記念会運動会等監督方〉や24年の学校劇禁止の訓令に見られるように,文部省はこれに概して消極的かつ統制的であった。31年の〈自由研究〉の新設,43年の〈修練課程〉の新設によって,文部省はクラブ活動の教育課程化に着手したが,それも〈皇国民の錬成〉という当時の教育方針によるものであった。したがって,クラブ活動固有の教育的価値が正当に評価されて,教育課程化されるようになったのは,47年および51年の学習指導要領以降であるといっていい。終戦直後,社会の解放的雰囲気を反映して,多種多様な文化・スポーツ活動がクラブ活動として噴出したが,60年代以降,受験体制の強化,学校教育の管理主義化のなかで,クラブ活動は多様化する生徒大衆の文化・スポーツ要求を組織できず,一部生徒の閉鎖的な活動,それも体育系クラブ中心の活動となっていった。そうなった背後には,クラブ承認基準の保守性,クラブ活動に対する学校当局の介入,顧問,先輩,上級生のクラブ支配,勝敗第一主義のクラブ運営などが,クラブ活動の教育的価値の実現を妨げているという問題も伏在している。このために,同好の活動がクラブ昇格を求めず,非公認のサークル・同好会活動や,地下組織的な活動にとどまるという傾向もみせている。
なお,69年,70年の学習指導要領において,文部省は週1回のクラブ活動の全員必修制を指示して以来,この用語は必修制のそれのみを指すものとなり,教育課程外の同種の活動は部活動と呼ばれるようになった。これとともに,部活動の社会教育移管が論議されたが,未解決のまま今日にいたっている。
→教育課程
執筆者:竹内 常一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
児童・生徒が、学年や学級の所属を離れ、共通の興味や関心に基づいて集団的に行う趣味的、レクリエーション的活動で、文化的な活動、体育的な活動、工芸的な活動からなる。学校では、児童・生徒が健全な趣味や豊かな教養を身につけ、余暇を善用する態度を育てるのを援助する目的で、それを教育課程のうえでは特別活動のなかのクラブ活動に位置づけ、従来年間35週にわたって実施するものとしてきた。したがって、これまで小学校の第4学年以上では、全員をいずれかのクラブに所属させて、自主的に活動させるのが原則であったが、教育課程における特別活動の見直しに伴い、1998年(平成10)の学習指導要領の改訂で中・高等学校のクラブ活動は廃止された。
大学などの高等教育機関では、クラブ活動は教育課程外の活動とみなされているが、小・中・高等学校においても、選手制度と毎日の猛練習を特色とするようなクラブ活動は、とくに部活動として、同様に教育課程外に位置づけている。部活動は、クラブ活動とほぼ同じ特質や意義をもつ教育活動として、放課後などに従来から広く行われてきたが、1989年(平成1)の学習指導要領の改訂で、部活動への参加をもってクラブ活動の履修にかえることができるという指導の弾力化が図られ、これを受けて多くの学校では部活動によるクラブ活動の代替措置がなされてきた。また、部活動を社会体育に移行させる動きに加え、地域の青少年団体やスポーツクラブなどに参加して活躍する者も出てきた。こうした状況をふまえて、98年(平成10)の改訂では、完全週5日制の導入、「総合的な学習」の時間創設に伴い、中・高等学校でのクラブ活動は廃止されることとなった。小学校では、学校や地域の実情などを考慮しつつ、児童の興味・関心をふまえて計画、実施できるよう、各学校において適切な授業時間数をあてることとなった。
なお、各種競技の全国大会の開催に伴い、そのための練習の過熱、選手本位の部活動についてはかねて批判があり、クラブ活動から部活動への移行がこうした傾向にいっそう拍車をかけはしないかという懸念も否定できない。
[井上治郎・下村哲夫]
『今橋盛勝ほか編著『スポーツ(部活)』(1988・草土文化)』▽『保坂展人編『先輩が怖い!――中学生に広がる新・身分制度』(1989・リヨン社)』▽『城丸章夫・水内宏編『スポーツ部活はいま』(1991・青木書店)』▽『山口満編著『特別活動と人間形成』新版(2001・学文社)』
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