クリーム(読み)くりーむ(英語表記)Cream

翻訳|cream

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

クリーム(ロック・グループ)
くりーむ
Cream

イギリスのロック・グループ。クリームには「乳脂」のほかに「最上級の部分」「最良のもの」という意味がある。ジョン・メイオールJohn Mayall(1933― 、ギター、ハーモニカ)のバンド、ブルース・ブレイカーズで斬新なギター・プレーを披露したエリック・クラプトン、アレクシス・コーナー・ブルース・インコーポレイテッド、ブルース・ブレイカーズ、グレアム・ボンド・オーガニゼーションなどのバンドを経たジャック・ブルースJack Bruce(1943―2014、ボーカル、ベース)、ジンジャー・ベーカーGinger Baker(1939― 、ドラム)が結成したトリオは、まさにその名のごとく当時のブルース、ジャズ界の若手からなる精鋭中の精鋭のトリオだった。ブルースはスコットランド王立音楽院で正規の音楽教育を受けており、ベーカーはすでにイギリスのジャズ・シーンで地位を確立していた。
 クリームの演奏スタイルは1960年代におけるロックの大音響時代の幕開けを告げた。彼らは無数のグループに影響を与え、クリームのようなトリオ編成のハード・ロック・バンドは、以降はパワー・トリオと呼ばれてロック・シーンに定着した。
 クリームはブルースをベースに、それまでの常識を覆す音量とジャズにならったインプロビゼーションで、1966年のデビューと同時にセンセーションを巻き起こす。メンバー各自の圧倒的な演奏力ゆえ過小評価されがちだが、ピート・ブラウンPete Brown(1940― )の書くシュルレアリスティックな歌詞とブルースの作曲によるオリジナル曲の質の高さ、セカンド・アルバム以降プロデューサーとなったフェリックス・パパラルディFelix Pappalardi(1939―1984)のサウンドづくりも、サイケデリック・ミュージックの代表的なバンドにクリームを押し上げた理由であることは間違いない。
 ファースト・アルバム『フレッシュ・クリーム』(1967)は、イギリス・ヒット・チャートのトップ5に入り、デビューしてすぐに周囲の期待通り、グループは一気にロック・シーンの最前線に躍り出た。デビュー・シングル「包装紙」(1966)はむしろシュルレアリスティックなポップスという感じのつくりで、クリームのあまり語られない側面がうかがえるが、彼らの本領は違った。ジャズやポップスのメソッドを取り入れた過渡期的な側面もある。デビュー・アルバムはオリジナル曲よりは、ブルース曲のリメイクがレパートリーの大半を占めていた。極彩色のサイケデリックなジャケットが目をひくセカンド・アルバム『カラフル・クリーム』(1967)は曲、演奏、プロダクションの三つがもっともバランスよく調和した代表作である。
 その後、強い個性をもったメンバー同士の軋轢がしだいにグループをむしばんでいった。彼らはレコード以上に、3人が対等に腕を競い合うライブ・パフォーマンスで絶大な人気を誇ったが、ライブの場は3人のエゴがぶつかり合う修羅場と化し、メンバーを消耗させる結果になる。それでも彼らには『クリームの素晴らしき世界』(1968)のような名盤をつくる力があったが、『グッバイ・クリーム』(1969)を最後に希代の名バンドは解散する。解散後ブルースはソロ・アーティストとして活動。ベーカーはクラプトンと行動を共にし、トラフィックのスティーブ・ウィンウッドSteve Winwood(1948― )らとブラインド・フェースを結成したほか、自身のバンド、ジンジャー・ベーカー・エア・フォースを率いるなどの活動を続けている。[中山義雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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