クリーム(読み)くりーむ(英語表記)cream

翻訳|cream

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

クリーム(脂肪分)
くりーむ
cream

乳汁から分離採取した脂肪分。牛乳の脂肪分は3~4%であるが、搾りたてをそのまま静置しておくと、脂肪分がしだいに上部に浮上してくる。これをクリーム層といい、美味なので牧畜社会では古くから珍重されてきた。クリームは、タンパク質の皮膜に包まれた乳脂肪球が、牛乳中に微細に分散した水中油滴型のエマルジョンemulsion(乳状液)であって、現在では牛乳から遠心分離法によって、脂肪分80%程度のものまでつくることが可能である。厚生省令「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」では乳脂肪18%以上であって、乳成分以外の成分を含まないものを「クリーム」と定義しているが、一般には18~50%のものが多く利用されている。[新沼杏二・和仁皓明]

特徴

クリームの組成は、目的とする乳脂肪含量のほか、タンパク質2~3%、乳糖3~3.5%、灰分0.5%を含んでいる。それ以外は水分で、食品衛生上牛乳と同様10℃以下に保管しておかなければならない。
 またクリームをホイップ(泡立て)しようとするときも、品温を10℃以下にする必要がある。すなわち、クリームをホイップする場合、気泡がクリームの中に取り込まれると同時に、タンパク質の膜で包まれている乳脂肪球が破壊され、遊離の固体脂肪が出てきて、気泡の周りを壁のように取り囲んで、しだいに固いホイップクリームになる。したがって、脂肪含量が30%以下ではホイップしにくく、またクリームが10℃以上になると、脂肪の一部が液化するのでうまくホイップしない。そこで、室温で温度が上がったクリームは、再度10℃以下に24時間以上おいて、脂肪を再結晶化させなければならない。また大きめの容器を氷で冷やしながら泡立てると失敗が少なく、ホイップしすぎると気泡がつぶれ、脂肪粒と水分に分かれてしまう。それを防ぐため、通常の市販品には微量の乳化剤や安定剤を添加しているものが多い。[新沼杏二・和仁皓明]

種類と利用

クリームは、牛乳から分離したものをそのまま殺菌冷却した、いわゆる生(なま)クリーム(フレッシュクリーム)と、それを乳酸菌で発酵させたサワークリームの2種類に分けられる。いずれも脱脂乳の利用が徹底している牧畜社会では身近なものだが、サワークリームはとくに旧ソ連地域、北欧、東欧などで好まれている。
 クリームは、用途によってコーヒー用、ホイップ用、調理用、食品原料用などに分けて製造されている。一般にコーヒー用として使われるのは乳脂肪分18~20%前後のもので、ライトクリーム、テーブルクリームとよばれる。ホイップ用のものは乳脂肪分40~50%のもので、ヘビークリーム、ダブルクリームなどともよぶ。調理用の場合はその使用目的に応じて、脂肪含量は多岐にわたるが、一般に40~50%のものが多く用いられている。また乳脂肪分80%以上のものをプラスチッククリームとよぶが、製菓原料としてごく限られた利用しかされていない。調理用にはスープから魚、肉、野菜料理のソース、デザートなどに、風味のよさ、舌ざわりの滑らかさ、粘度などを加える目的で広く用いられている。なお、乳脂肪を植物油脂に置換したイミテーションクリームや、コーヒー添加用に粉末化したものなどが市販されているが、いずれもクリームの呼称は許されていない。[新沼杏二・和仁皓明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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