クロムモリブデン鋼(読み)クロムモリブデンコウ(その他表記)chromium molybdenum steel

デジタル大辞泉 「クロムモリブデン鋼」の意味・読み・例文・類語

クロムモリブデン‐こう〔‐カウ〕【クロムモリブデン鋼】

合金鋼一種で、クロム1パーセント程度、モリブデン0.15~0.3パーセントを添加した鋼。溶接しやすく、高温に強く、構造用材に用いる。クロモリ

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精選版 日本国語大辞典 「クロムモリブデン鋼」の意味・読み・例文・類語

クロムモリブデン‐こう‥カウ【クロムモリブデン鋼】

  1. 〘 名詞 〙 ( クロムは[ドイツ語] Chrom モリブデンは[ドイツ語] Molybdän ) 構造用合金鋼の一つ。鋼にクロム〇・九~一・五パーセント、モリブデン〇・一五~〇・三五パーセントのほか珪素、マンガンなどを添加したもの。航空機兵器自動車などのピン類、シャフト類、歯車類など、各種の機械構造部材に用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロムモリブデン鋼」の意味・わかりやすい解説

クロムモリブデン鋼
くろむもりぶでんこう
chromium molybdenum steel

クロムとモリブデンとを同時に添加した鋼。高温強度を向上させる目的でつくられたこの種の鋼材は通常、耐熱鋼に分類される。狭義のクロムモリブデン鋼は、1%程度のクロムと0.15~0.3%のモリブデンとを添加し、0.2~0.45%の炭素を含有する、いわゆる低合金構造用鋼をいう。クロムとモリブデンとの添加により、無添加鋼の丸棒の約5倍の直径の丸棒まで焼入れ硬化可能となる。焼入れ後約650℃に焼き戻して、車軸など強靭(きょうじん)性を要求される部材に用いるが、クロム鋼の場合に焼戻し温度から徐冷されたときにみられる焼戻し脆性(ぜいせい)は、モリブデンの添加により著しく軽減される。

須藤 一]

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改訂新版 世界大百科事典 「クロムモリブデン鋼」の意味・わかりやすい解説

クロム・モリブデン鋼 (クロムモリブデンこう)
chromium-molybdenum steel

機械構造用鋼として使用される鋼である。強靱性を付与するために,焼入れ・焼戻しにより,焼戻しマルテンサイトまたはトルースタイトマトリックスに調質し,引張強さ100kgf/mm2内外にして使用する。合金成分としては炭素0.13~0.50%,クロム0.9~1.2%,モリブデン0.15~0.45%の範囲で定められている。肌焼鋼の一種として浸炭用にも使用される。ある程度の耐熱性を有するので高圧蒸気や石油・ガス用の管やバルブに使用されることも多い。
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百科事典マイペディア 「クロムモリブデン鋼」の意味・わかりやすい解説

クロム・モリブデン鋼【クロムモリブデンこう】

クロム鋼モリブデンを0.15〜0.45%添加して,機械的諸性質をさらに向上させた強靭(きょうじん)鋼焼戻しの敏感性が緩和され,熱処理が容易となる。機械構造用,自動車用,航空機部品などに好適。組成によっては肌焼(はだやき)用にも使用。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロムモリブデン鋼」の意味・わかりやすい解説

クロム=モリブデン鋼
クロム=モリブデンこう
chromium-molybdenum steel

クロム,モリブデン,炭素より成る合金鋼。耐熱性,耐食性,機械的性質にすぐれており,機械構造用鋼,熱交換器,圧力容器用の鋼管と鋼材,耐食・耐熱用ステンレス鋼などの用途に利用されている。また,特に炭素量 0.13~0.27%のものは,熱処理 (600℃付近での焼入れ・戻し) したものは強靭鋼として強力ボルト,クランク軸などに利用され,浸炭焼入れで表面硬化させたものは耐摩耗性にすぐれ,歯車などに利用される。

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世界大百科事典(旧版)内のクロムモリブデン鋼の言及

【機械構造用鋼】より

…機械の機能的でかつ強度を必要とする部品に使用する鋼。いちばん安価なのは,いわゆるSC材と呼ばれる普通炭素鋼で,これにクロムとモリブデンを添加したクロム・モリブデン鋼(SCM材),さらに強靱(きようじん)さを上げるためにニッケルを加えたニッケル・クロム・モリブデン鋼(SNCM材)がこれに当たる。これらは肌焼鋼といわれ,おもな合金元素はクロム,モリブデン,ニッケルである。…

【構造用合金鋼】より

…機械構造部品に使用される強度と靱性(じんせい)をそなえた合金鋼。炭素量は0.1~0.5%で,これに少量のクロム(0.9~1.2%)を添加したクロム鋼,クロム(0.5~1.0%)とニッケル(1.0~3.5%)を添加したニッケル・クロム鋼,クロム(0.9~1.2%)とモリブデン(0.15~0.45%)を含むクロム・モリブデン鋼,さらにニッケル(0.4~4.5%),クロム(0.4~1.8%),モリブデン(0.15~0.7%)を含んだニッケル・クロム・モリブデン鋼がある。これらの合金元素はとくに焼入れ性と焼戻し性を調節するために添加される。…

【耐熱鋼】より

…耐熱鋼はその主たる組織によって,フェライト系とオーステナイト系に分けられる。フェライト系耐熱鋼はクロム・モリブデン鋼から発展したものである。2.5%程度のクロムを含むクロム・モリブデン鋼は焼入れした後の焼戻しにおいて軟化しにくく,また400℃前後である程度の耐酸化性を有している。…

※「クロムモリブデン鋼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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