強靭鋼(読み)キョウジンコウ

化学辞典 第2版 「強靭鋼」の解説

強靭鋼
キョウジンコウ
tough hardening steel

焼入れ焼戻しをほどこしてすぐれた強靭性を与えた一群特殊鋼.自動車そのほかの各種機械類の構造部品,たとえば軸,歯車ボルトナットなど強靭性を必要とする用途に広く用いられる.十分な強靭性を得るには,まず焼入れによって完全マルテンサイト組織にしたものを,焼戻し脆性を避けて適切な組織となるように焼戻すことが必要である.炭素鋼では焼入れ性が小さく,小物部品に限られるので,強靭鋼としては0.2~0.5質量% のCのほかに1.5質量% までのMn,約1質量% のCr,0.7質量% 以下のMo,4.5質量% 以下のNiなどを単独あるいは組み合わせて添加した低Mn鋼,Cr鋼,Cr-Mo鋼,Ni-Cr鋼,Ni-Cr-Mo鋼などが多数規格化されている.焼入れ性はC量にも依存するが合金元素の影響も大きく,上記の各鋼種は後のものほど概して焼入れ性が増加する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「強靭鋼」の意味・わかりやすい解説

強靭鋼
きょうじんこう
high strength steel

ねばり強い低合金(合金元素量が1%前後)構造用鋼。引張り強さが1000~2000メガパスカル程度のもので、これより強力な鋼を超強靭鋼という。炭素を0.3~0.4%含むほか、クロムマンガンニッケルモリブデンなどを1%前後含む、いわゆる構造用合金鋼はこれに属し、焼入れ後650℃付近で焼き戻して使用される。歯車や車軸など靭性を要求される機械部材に用いられる。

 炭素含有量が0.2%前後の低合金鋼は焼入れ状態でもかなり高い靭性を示すので、この種の鋼は焼入れ後200℃付近で焼き戻して使用され、マルテンサイト鋼ともよばれる。これらは超強靭鋼の一種であり、航空機の脚の材料などに用いられる。

[須藤 一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「強靭鋼」の意味・わかりやすい解説

強靭鋼
きょうじんこう
high strength steel

一般に構造用鋼として用いられている鋼のうち,特に強度と靭性を強化したものをいう。日本工業規格 JISによると,中炭素鋼,クロム鋼,ニッケル鋼,クロム=モリブデン鋼,ニッケル=クロム=モリブデン鋼などがこれにあたる。このほかに,焼入性を向上させるためクロム鋼にホウ素を添加したものなどがある。これらの鋼は熱処理を施されたときにのみその強さと靭性を発揮する。一般的には熱処理温度 550~650℃付近で,引張り強度 700~1000Mpaのものが多い。

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百科事典マイペディア 「強靭鋼」の意味・わかりやすい解説

強靭鋼【きょうじんこう】

大きい強さと延性をもつ鋼の総称。炭素量0.25〜0.5%の鋼に1〜数種の特殊元素を少量添加した低合金鋼で,クロム鋼,クロム・モリブデン鋼,ニッケル・クロム鋼,ボロン鋼などが代表的。機械,構造物などに使用される。→高張力鋼

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