発酵生地にバターを畳み込んだものを、のして三角形に切り、底辺から巻き上げて三日月形に整形して焼いたパン。ブリオッシュ(バターと卵を等量にたくさん混入したパン)と並んで、バターのおいしさを仕込んだフランスのパンの代表である。17世紀末、オーストリアのウィーンに侵入したトルコ軍を撃退したとき、これに協力した製パン業者の功績を記念して、トルコの国章の三日月をかたどってつくられたのが始まりで、やがてウィーンから全ヨーロッパに広まっていった。当初は普通のパン生地、またはバターロールの生地でつくられていたが、パリでは現在の折り畳み式の生地でつくるようになり、これがフランス人の好みにあって声価があがった。発酵と加熱したときのガスの生成、油脂の作用で、軽くふっくらとした独特の風味がある。ウィーン式の三日月パンは、ギプフェルやクレセント・ロールの形で現在もつくられている。
[阿久津正蔵]
…上にあげたような,穀粉,水,イースト,塩のほかには何も加えないようなパンはリーン(貧しい)なパンと呼ぶ。これに対して,バターや鶏卵をたっぷり加えたブリオシュやクロワッサンなどはリッチなパンという。また,乾果をたっぷり混ぜるイタリアのパネトーネやドイツ系のシュトレンといったものは,菓子パンといったほうがよいが,やはりリッチなパンに属する。…
※「クロワッサン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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