C21H36N7O16P3S(767.54).CoAと略記する.補酵素Aともいう.F. Lipmann(リップマン)(1945年)が,ハトの肝臓の無細胞系におけるスルホンアミドのアセチル化に関与する補酵素としてCoAを見いだし,ついでF. Lynenら(1951年)が,“活性酢酸”はアセチルCoAであることを明らかにして以来,代謝上CoA,およびその誘導体の関与する数多くの反応,およびそれらの機構が明らかにされた.多くの生体でCoAの生合成はヒトの場合も含めて図(b)のように行われる.
CoAを含む反応では,コエンザイムAで活性化される代謝物質の結合は,高エネルギーの硫黄結合によりパンテテイン部のメルカプト(SH)基に起こる.したがって,遊離(還元)形補酵素Aの構造をCoA~SHと略記する.おもな代謝系としては,炭水化物代謝,脂肪酸の分解と合成,プロピオン代謝,分岐鎖アミノ酸代謝などがあり,生理的に重要なはたらきをしている.たとえば,解糖反応によって生じたピルビン酸は,ミトコンドリア内でピルビン酸脱水素酵素複合体によりアセチルCoAとなり,TCAサイクルへと入る.
CH3COCOOH + CoA~SH + NAD+ →
(ピルビン酸)
CH3CO~S-CoA + CO2 + NADH + H+
(アセチルCoA)
また,TCAサイクル中では,α-ケトグルタル酸はこれと同様の反応機構でスクシニルCoAとなり,ATPの生成,脂肪酸のアシルCoAの生成,ポルフィリンの合成などに利用される.[CAS 85-61-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
コエンチームAともいう。リップマンF.Lipmannが生体内におけるアセチル化反応に関与する活性酢酸の挙動を研究している最中に,耐熱性の因子としてこの物質を発見した(1947)。補酵素Aとも呼ばれ,CoA(コエー)と略記する。微生物から高等動物にわたって広く分布している。動物ではパントテン酸が前駆物質となり,ATPの関与のもとにまず酵素的にリン酸化され,次にシステインが取り込まれたのちに,脱炭酸と脱リン酸化が起こり,さらにアデニンヌクレオチドが結合して最終産物としてのコエンザイムAができ上がる。化学構造としては,アデノシン3′リン酸5′ピロリン酸,パントテン酸,β-メルカプトエチルアミン(システアミン)の三つの部分から成る(図)。
コエンザイムAの機能の中心はSH基であり,アセチル基,ブチル基などの各種アシル基と高エネルギーチオリン酸エステルを形成し,アシル基の供与体として各種の重要な生体反応に関与する。名称中のAは,アセチル化にちなんでリップマンが名付けたと言われる。動物では肝臓,副腎にとくに多い。最近では化学合成も微生物を利用した合成も実用化されている。
執筆者:徳重 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
「補酵素A」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…欠乏症は脚気,多発性神経炎が有名。(4)コエンザイムA(補酵素Aともいい,CoAと略記) アデノシン‐3′‐リン酸,システアミン,パントテン酸の三つの部分が連結した化合物でアシル基の転移反応などに関与する。初めカプランN.O.KaplanとリップマンF.Lipmannが1947年に酵素的アセチル化反応に必要な耐熱性の活性酢酸として発見した物質。…
※「コエンザイムA」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新