コジュケイ(読み)こじゅけい(英語表記)bamboo partridge

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コジュケイ」の意味・わかりやすい解説

コジュケイ
こじゅけい / 小綬鶏
bamboo partridge
[学] Bambusicola thoracica

鳥綱キジキジ科の鳥。中国の揚子江(ようすこう)流域以南と台湾に自然分布する。1919年(大正8)以降、中国産の亜種が日本の各地放鳥されて野生化し、岩手県以南の本州の太平洋沿岸、四国、九州では普通に繁殖しており、台湾産の亜種テッケイ(タイワンコジュケイ)も神戸付近で野生化している。全長約27センチメートル。雌雄同色で、上面は褐色地に黒色の小縦斑(じゅうはん)があり、下面は淡黄褐色で、わきに小縦斑がある。のど、頸(くび)は赤褐色、胸と眉斑(びはん)は青灰色体つきはずんぐりしていて尾も短い。山や平地の明るい林、竹林草原などにすみ、歩き回りながら雑草種子、果実、昆虫など動物質のものを採食する。繁殖期の雄は、「チョットコイ、チョットコイ」と聞こえる大きな声を盛んに出す。林の中の草陰に浅いくぼみを掘って巣とし、5、6月ごろ淡い灰黄色の卵を5~10個産む。雛(ひな)は早成で、孵化(ふか)したときには綿毛が生えそろっており、数時間後には親のあとについて、巣を離れてしまう。外敵にあったときに短い距離を飛ぶだけで、渡りもしない。繁殖期以外は数羽から十数羽の群れで生活する。自然分布していない動物を移入して野生化させることは、一般的に好ましいことではない。しかし、コジュケイの移入が、キジ、ウズラなど日本在来の近縁種に与えた具体的影響についてはよくわかっていない。

 この種はまた、猟犬を使った銃猟の対象として喜ばれ、1970年(昭和45)前後には毎年100万羽以上が猟獲されていたが、その後捕獲数が激減した。肉は美味で、ニワトリと同じように下ごしらえしてから、まるごとローストにしたり、薄切りをすき焼きにする。

[竹下信雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「コジュケイ」の意味・わかりやすい解説

コジュケイ (小綬鶏)
Bambusicola thoracica

キジ目キジ科コジュケイ属の鳥。全長約27cm。狩猟鳥。原産地は中国南部と台湾。日本へは飼鳥として輸入され,また1919年に東京,横浜で放鳥され,その後野生状態で生息するものが各地に広がった。現在では本州以南の積雪の少ない地方に留鳥として生息している。台湾のものは別亜種で,テッケイ(竹鶏)の名がある。これも31年に神戸市付近で放鳥され,現在でもその付近に生息している。ハトくらいの大きさで体は丸みを帯び,尾は短い。体の上面は褐色で白色,黒色,灰色の斑紋があり,下面は暗黄色,のどからくびにかけて赤褐色,まゆ,胸は青灰色。雌雄とも同色だが,雄にははっきりしたけづめがある。山地や平地の雑木林,竹林,草原などの地上にすみ,チョットコイ,チョットコイと聞こえる大声で鳴く。雑食性で,種子や昆虫を食べる。5~6月に地上に簡単な巣をつくり,1腹5~10個の淡灰黄色の卵を産む。約18日抱卵し,孵化(ふか)した雛は数時間後には巣を離れ親鳥とともに生活する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コジュケイ」の意味・わかりやすい解説

コジュケイ
Bambusicola thoracicus; Chinese bamboo partridge

キジ目キジ科。全長 27cm。頭上は濃褐色,眉斑は灰色,顔と喉は赤褐色。上胸部は灰色。背は灰褐色で,濃褐色の斑がある。と尾は灰褐色。胸には褐色横帯があり,腹部は黄褐色で脇に褐色斑がある。中国南部,タイワン(台湾)に分布し,日本には 1919年に移入され,本州四国地方九州地方佐渡島伊豆七島などの積雪のほとんどない地域に生息している。平地から低地の森林や竹藪にすみ,地上で植物の種子,果実,昆虫などを食べる。「ちょっとこい,ちょっとこい」と聞こえる特徴ある声で鳴く。台湾に分布する亜種テッケイ B. t. sonorivox は,喉が褐色で,顔から上胸部全体が灰青色である。この亜種も日本に移入され,兵庫県神戸市付近の山地に少数が生息している。

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百科事典マイペディア 「コジュケイ」の意味・わかりやすい解説

コジュケイ

キジ科の鳥。翼長13cm。ウズラに似るが,ずっと大きい。中国南部原産で,日本では1920年ごろ初めて東京と横浜に放鳥された。その後狩猟鳥として放たれたものがふえて,現在は北海道以外の各地に分布。平地〜低山のやぶにすみ,鳴声はチョットコイと聞こえる。
→関連項目シャコ(鳥類)

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世界大百科事典(旧版)内のコジュケイの言及

【帰化生物】より

… 帰化動物には,人間が意識して有用な動物を移入し,帰化を図った場合と,人間がそのような意識なしに動物を移入し,偶然の機会に帰化した場合とがある。人間が意識的に帰化を図って成功したものとしては,日本には,沖縄県が毒ヘビ,とくにハブの駆除を目的として,1910年にインドから移入し渡名喜島などに放したマングース,農林省が狩猟鳥を増やす目的で,19‐20年に中国南部から移入し,東京と神奈川に放したコジュケイ,同じく30年ころから数次にわたって朝鮮から移入し,北海道日高に放鳥したコウライキジ,カの駆除を目的に台湾から移入し,東京,千葉などで野生化している北アメリカ原産のカダヤシ(タップミノー),食用に中国から移入し,利根川水系で野生化しているソウギョなどがある。 偶然に帰化したものとしては,飼育していたものが逃げ出して定着したものに,1918年ころから食用に北アメリカから移入し,各地で養殖していたが,その一部が逃げ出して各地に野生化したウシガエル,そのウシガエルの餌として30年ころ神奈川に移入して養殖していたところ,大雨による出水で逃げ出して,付近の水田などに野生化し,しだいに各地に分布を広げたといわれる北アメリカ産のアメリカザリガニ,35年ころ食用に台湾から移入したものが,小笠原,奄美,沖縄などに野生化した,アフリカ原産のアフリカマイマイなどがある。…

※「コジュケイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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