アルゼンチンの作家。ベルギーのブリュッセル生まれ。幼時から幻想文学に親しみ、ポーから決定的ともいえる影響を受けた。その後もコクトー、ジャリ、ロートレアモン、あるいはカフカ、ジョイス、スペインのラモン・ゴメス・デ・ラ・セルナらの作品を読みふけり、文学的自己形成を行う。一時、地方の学校で教鞭(きょうべん)をとるが、そのときギリシア神話に題材をとる詩劇『王たち』(1949)を発表、ついで51年には幻想的短編を収めた『動物寓意譚(ぐういたん)』を出版し一部の注目を集めた。同年フランスに留学し、以後もそこにとどまり創作を続けた。
懸賞に当選した人々を乗せた船で起こる事件を縦糸に、アルゼンチンの現代社会と人間の運命を浮き彫りにする小説『当籤者(とうせんしゃ)たち』(1960)で内外の注目を集め、さらに現代人の魂の彷徨(ほうこう)と愛の探究を描いた小説『石蹴(いしけ)り遊び』(1963)によって現代ラテンアメリカ文学の代表的作家と目される。「自分にとってものを書くのは悪魔祓(ばら)いの儀式」とコルタサルは語る。ほかにも不気味な幻想をたたえた『遊戯の終り』(1956)、『秘密の武器』(1959)、『すべての火は火』(1966)、『通りすがりの男』(1977)などの短編集や『組立てモデル62型』(1968)、『マヌエルの教科書』(1973)などの長編、あるいは『八十世界一日一周』(1967)などのエッセイ集がある。
[木村榮一]
『木村榮一著『神話的コルタサル』(『ラテンアメリカ文学を読む』所収・1980・国書刊行会)』
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