腟腔から内視鏡的にその最深部に存在する子宮頸部を観察するための機器。〈コルポ〉は腟と子宮を意味するギリシア語kolposに由来する。1925年ヒンゼルマンH.Hinselmannの発明によるもので,目的は子宮頸癌ならびにその前癌性病変を早期診断するためである。コルポスコープを用いると,頸部表面を立体的に5~40倍に拡大視することができる。初めドイツを中心にヨーロッパ諸国で使われていたが,日本には第2次大戦後導入され,昭和30年代から広く用いられており,1970年以降アメリカを含む全世界に普及した。
コルポスコープを用いた検査をコルポスコピーcolposcopyというが,コルポスコピーは頸部粘膜の色調やそこにみられる微小血管の性状など肉眼では見ることのできない微細な変化を検索し,その所見から悪性病変の部位や広がりを確認して病理組織診断のための最適な生検部位の同定に役立つのみでなく,これ自体で,病変の悪性度の推定が可能である。まったく苦痛を伴わず,細胞診とともに子宮頸癌の早期診断には不可欠の検査法である。
執筆者:泉 陸一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
腟(ちつ)拡大鏡ともいい、6~40倍の拡大率をもった立体顕微鏡に強力な照明装置をつけ、焦点調節が容易にできるような支持台に取り付けたものである。子宮頸癌(けいがん)の好発部位である子宮頸腟部を直視下に観察し、ことに肉眼で見ることのできない無症状、無自覚の臨床前癌(早期癌)を発見するための強力な診断装置である。コルポマイクロスコープはさらに倍率の高い100~200倍で、組織表面の細胞を生体染色して観察するための装置である。
[新井正夫]
コルポスコープを用いて診断することで、腟拡大鏡診ともいう。この診断法は病変の局在を知るのに有効であり、細胞診およびコルポスコピーによって確認された異常部位をねらって行う生検(ねらい組織診)の3法を併用することによって正確な診断がなされる。また、集団検診で多人数に行った細胞診の要精密検査者を対象に実施する方法としても有用である。コルポスコピーは細胞診と併用することによって高度異形成上皮などの前癌病変および上皮内癌や初期浸潤癌など早期癌の発見が可能となり、子宮癌の治癒率は飛躍的な向上をきたした。また、これによって、膀胱(ぼうこう)や直腸の障害を少なくする最小にして有効、適切な縮小手術ができるようになった。
[新井正夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…体のなかにある空間,すなわち内腔を観察するための道具をいう。内部を見る器具を意味するエンドスコープendoscope(endoは内部,scopeは望遠鏡などものを見るための道具)の訳語。対象とする内腔が胃であるか膀胱であるかなどによって,胃鏡あるいは膀胱鏡などと呼ばれ,内視鏡はそれらの総称である。日本でこの用語が広く用いられるようになったのは,1961年に日本内視鏡学会が設立された以降のことである。…
※「コルポスコープ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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