ドミニコ会のイタリア人修道士。1491年よりフィレンツェのサン・マルコ大聖堂院長。自ら禁欲主義を貫き、当時の教会の堕落、社会の腐敗を糾弾、「悔い改めよ」と説いた。その説教は率直で予言的色彩が濃く、多くの人をひきつけた。1494年、イタリア全土を恐怖させたフランス王シャルル8世のイタリア遠征は、彼の予言どおり「神罰」と世間に受け止められ、その政治的影響力も増した。同年、彼の指導のもとフィレンツェ共和国はメディチ家を追放して自由を取り戻し、国政改革を断行、フランス王シャルルの懐柔にも成功、危機を脱した。しかしサボナローラの非妥協的な神政政治、親仏方針、教皇批判は国内に敵をつくった。彼はこの反対勢力「アッラッビアーティ(憤怒派)」と教皇アレクサンデル6世に説教中止と破門を突きつけられるが、「ピァニョーニ(泣き虫)信徒」の絶対的支持を受けて、教皇に退位を勧告して対抗する。両派の対立は激化、ついに1498年4月「火の審判」による対決が決定する。しかし当日この決闘が中止になるや、彼に奇跡の成就を期待していた群衆は失望し、逆にいらだちと憤懣(ふんまん)を彼のうえに浴びせた。サン・マルコ大聖堂は暴徒と憤怒派に襲われ、彼自身も市当局に捕らわれ、5月23日、異端のかどで市政庁広場で処刑後焼かれた。彼は宗教改革の先駆者であったが、その神政には中世的、時代錯誤的な面があった。彼の唱導の下、多くの芸術作品や書物が、他の奢侈(しゃし)品とともに堕落の産物として焼かれた「虚栄の焼却」はその一端を示す。
[在里寛司 2017年11月17日]
ルネサンス期フィレンツェの説教師,宗教指導者。フェラーラに生まれ,ドミニコ会に入り神学を学ぶ。82年にフィレンツェに移り,91年にサン・マルコ修道院長(管区長)になる。メディチ家支配下のフィレンツェ社会を痛烈に批判した説教を行い,共和制の伝統とルネサンス末期の神秘主義思想の影響下にあった市民の支持を得た。シャルル8世の南下によってメディチ家がフィレンツェを追われると(1494),彼の発言力が増大し,その提言で大評議会の設置,税制改革などが実現し,異教的な本や美術,ぜいたく品を焼く〈虚栄の焼却〉が行われた(1497)。しかし,アレクサンデル6世と教皇庁の堕落を厳しく批判したために破門され(1497),やがて市民の支持を失って捕らえられ,教皇庁の審問官による裁判で火刑に処された(1498)。彼が政治に影響を与えた時期は短かったが,当時の思想家や美術家に大きな影響を残した。
執筆者:清水 廣一郎
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…これに背板とひじ掛け用の側板が付加されると,座部が蓋付きの収納箱となった典型的なハイバック(高い背もたれ)式の領主や司教用のいすとなる。 ルネサンスになると,イタリアではダンテスカdantescaやサボナローラsavonarolaとよばれる古代ローマ風の折りたたみ式のいすが上流階級の社交生活で愛用された。またフィレンツェ産のタピスリーをシートとバックに張ったひじ掛けいすや豪華な彫刻で飾ったカッサパンカcassapancaとよばれる長いすなどは,公的な社交用の家具であった。…
…他方,15世紀後半の〈ルネサンス教皇〉らは免罪符(贖宥状)を濫発したが,そのあくなき財政政策は地方教会を基盤とする諸侯領主との間の対立を深くしていた。享楽好きで知られる教皇レオ10世を生んだフィレンツェのメディチ家と真っ向から衝突したのはサボナローラであったが,彼によってもなお教皇庁の改革ははたしえないでいた。 ルターは,最初エルフルトでオッカム主義の哲学を学んだが,アウグスティヌス会に入り,さらにウィッテンベルクに移って,そこの大学で聖書学教授となった。…
…教皇インノケンティウス8世は1487年の教書で,〈異端,不敬,中傷誹謗〉の本の流通禁止,著者の処罰を求め,罰則として破門,罰金,焚書をあげている。しかし,焚書を民衆教戒の熱狂的な儀式として組織したのは,ごく短期間(1494‐98)フィレンツェを支配した改革者サボナローラである。しかし,この時期になると,活版印刷術の普及により本の生産は容易かつ大量に行われるようになっていたので,焚書によって絶滅できるものではなく,それはむしろ権力の意志を示威し,民衆に実物教育を行う象徴的行為としての意味合いをもっていた。…
※「サボナローラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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