改訂新版 世界大百科事典 「サワグルミ」の意味・わかりやすい解説
サワグルミ
Pterocarya rhoifolia Sieb.et Zucc.
山中の沢ぞいに多いクルミ科の落葉高木。カワグルミとも呼び,長く垂れ下がる総(ふさ)に果実がつくようすから,藤グルミの名もある。樹高は30mにも達する。葉は奇数羽状複葉で枝先に集まってつき,その先に長い柄のある冬芽が形成される。葉軸には毛があり,小葉は15枚前後で,細鋸歯がある。雄花は尾状花序をなし,新枝の基部の芽鱗の腋(えき)から垂れ下がる。雌花は新枝の頂端に尾状花序をなす。苞の腋には,花被に囲まれためしべの二つの柱頭がある。この時点では小苞は顕著ではない。花後,雌花序は著しく伸長して下垂し,小苞が果実の両側に翼状に発達する。果実は1室であるが,基部は四つに仕切られている。種子は1個で胚乳はなく,折りたたまれた子葉がある。日本特産種で,北海道,本州,四国,九州の温帯域にみられる。材はマッチの軸木,器具,家具などに用いられ,とくに下駄材としてヤマギリの名で呼ばれる。樹皮は細工物に用いる。
サワグルミ属Pterocaryaは日本,北アメリカ,コーカサスにそれぞれ1種,中国大陸に数種を産し,隔離分布している。そのうち中国産のシナサワグルミP.stenoptera DC.は生長が速く乾燥にも強いため,日本でも都市の街路樹や公園樹に利用されている。
執筆者:岡本 素治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報