改訂新版 世界大百科事典 「サンショウモ」の意味・わかりやすい解説
サンショウモ
Salvinia natans(L.)All.
姿がサンショウの葉に似て小型で,水田や池沼に雑草として浮遊する水生シダ。一年生。茎はまばらに分枝する。葉は3枚ずつ輪生するが,2枚は浮遊葉,1枚は根のように水中に沈む水中葉(沈水葉)である。浮遊葉は緑色,楕円形,表面には毛をつけた短い突起が密につき,裏面には軟らかい毛がある。水中葉は根のような細糸に裂けて,細毛をつける,その基部に小さい球状の胞子囊群がむらがってつく。胞子囊群は表面に軟毛をつけた球状の薄い包膜に包まれる。胞子は異型。根はない。本州,四国,九州の各地に産するが,農薬を使うようになってから水田などには見られなくなった。アジア,ヨーロッパの温帯域に広く分布し,北アメリカ,アフリカにも生育しているが,自生かどうか疑わしい。大型のナンゴクサンショウモS.cucullata Roxb.ex Boryは温室で普通に見られるが,逸出して暖地では野外に生じることもある。
執筆者:加藤 雅啓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報