シクロプロパン
しくろぷろぱん
cyclopropane
シクロアルカンの一つ。トリメチレンともいう。無色の可燃性気体。酸素と爆鳴気をつくる。合成は1,3-ジクロロプロパンと亜鉛のウルツ反応によるか、エチレンへのカルベン付加反応(シモンズ‐スミス反応)による(図)。シクロプロパンは炭素結合角のひずみが大きく、そのため3員環を構成している炭素‐炭素結合(C-C)は折れ曲がった結合(バナナ結合)である。開環のとき、ひずみのエネルギーを放出するので、他のシクロアルカンよりはるかに反応性に富んでいる。ニッケル触媒上、120℃で水素化され、プロパンを与える。ルイス酸触媒下では臭素と反応して1,3-ジブロモプロパンを、また、水が付加して1-プロパノールを生成する。酸素との混合体は吸入麻酔剤として用いられる。
[向井利夫]
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シクロプロパン
cyclopropane
化学式 C3H6 。シクロアルカンの一種。ジブロムプロパンから合成される。特異臭のある無色で引火性の気体。沸点-34℃。分子構造がきわめてひずんでいるため,化学的に活性で,水素2原子を付加して n- プロパンになる。そのほか炭素-炭素二重結合に似た反応を起す。ただし二重結合よりも活性ではない。空気との混合物は引火爆発する。吸入麻酔薬として使われる。除虫菊の有効成分ピレスリンはその分子構造中にシクロプロパン環をもっている。
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「シクロプロパン」の意味・わかりやすい解説
シクロプロパン
化学式はC3H6。脂環(3員環)化合物で無色の気体。融点−127.53℃,沸点−32.7℃。吸入麻酔薬として用いられるが,引火,爆発の危険性がある。1,3−ジブロムプロパンと金属ナトリウムの反応で得られる。シクロパラフィンの一つであるが,環のひずみのため反応性に富み,たとえば臭素と反応して1,3−ジブロムプロパンを生ずる。(図)
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シクロプロパン
シクロプロパン
cyclopropane
C3H6(42.08).1,3-ジブロモプロパンを金属ナトリウムと処理すると得られる.
無色の気体.融点-126.6 ℃,沸点-34 ℃.燃焼熱2091 kJ mol-1.ニッケル上で120 ℃ で還元するとプロパンになる.引火性,爆発性があり,また吸入麻酔薬に使われる.[CAS 75-19-4]
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デジタル大辞泉
「シクロプロパン」の意味・読み・例文・類語
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シクロプロパン【cyclopropane】
サイクロプロペインともいう。3員環の炭化水素。常温で無色の気体。融点-127.53℃,沸点-32.7℃。代表的な合成法としては,(1)アルコール中で1,3‐ジブロモプロパンに亜鉛を作用させて作る方法と,(2)亜鉛‐銅カップルの存在下に,エーテル中でアルケンとジヨードメタンとを反応させて作る方法があり,後者はとくにシクロプロパン誘導体の合成に適している。
構造は図に示すとおりで,C-C-Cの結合角60度は正四面体角109.5度にくらべて著しく小さいため,環にはひずみがかかっている。
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