シシオザル(英語表記)lion-tailed monkey
Macaca silenus

改訂新版 世界大百科事典 「シシオザル」の意味・わかりやすい解説

シシオザル
lion-tailed monkey
Macaca silenus

インド南西部の熱帯多雨林に生息する霊長目オナガザル科の旧世界ザルマカック属の中ではもっとも樹上生活の傾向が強い。顔のまわりに長い毛がたてがみ状に生え,先端房状の毛があるライオンのような尾をもつことからこの名がついた。頭胴長約50cm,尾長約30cm。体重は約7kgで比較的ほっそりしている。果実,花,若芽などの植物食が中心であるが,昆虫も食べる。16~22頭の複雄群をつくる。群れに属さずに単独生活をする雄も多いため,群れ内の雄と雌の比はほぼ1対3と雌のほうが多い。社会構造に関する詳しい報告はないが,マカック属の他の種と同様の母系社会であると考えられている。ニルギリラングールとボンネットモンキーとは同じ地域に生息するが,このうちシシオザル同様樹上生活を営むニルギリラングールとは強い対立関係にあり,相互に排他的ななわばりをもつ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シシオザル」の意味・わかりやすい解説

シシオザル
ししおざる / 獅子尾猿
lion-tailed monkey
[学] Macaca silenus

哺乳(ほにゅう)綱霊長目オナガザル科の動物。インド南西部の常緑樹林帯にすむ。体毛は黒く、顔の周囲には灰色の毛がたてがみ状に生え、尾の先端に房毛がある。このたてがみと尾が和名の由来。体長50センチメートル、尾長30センチメートル、体重は6キログラムになる。マカック属のなかではもっとも樹上性の傾向が強く、果実を主食にし、昆虫の幼虫も食べる。20頭ぐらいの複雄群をつくり、群れは2平方キロメートルぐらいの遊動域をもつ。東南アジアにすむブタオザルM. nemestrinaとは、現在の分布域は遠く離れているが、系統的には近縁で、ともにマカック属の古いタイプの名残(なごり)をとどめている。

[川中健二]

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百科事典マイペディア 「シシオザル」の意味・わかりやすい解説

シシオザル

霊長目オナガザル科の旧世界ザル。頭胴長50〜60cm,尾30cmほど。体毛は長く黒色。尾の先に房状の毛があるのでシシオザルというが,顔の周囲に灰色のたてがみのような毛をもち,全体の感じもライオンに似る。インド南部に分布。山岳地帯の湿性林に20頭ほどの群ですみ,広い地域を移動する。木の芽,種子など植物食が主だが,昆虫なども食べる。幼獣から飼えばなれるが,成獣はなれにくく気が荒い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シシオザル」の意味・わかりやすい解説

シシオザル
Macaca silenus; lion-tailed macaque

霊長目オナガザル科。体長 60cm,尾長 35cm内外。体は黒褐色で,顔のまわりに灰色の長毛をもち,尾端にもライオンの尾のような総毛をもつ。 20頭前後の小群で森林地帯に生活する。インド南西部に分布する。

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