シンパー(英語表記)Andreas Schimper

改訂新版 世界大百科事典 「シンパー」の意味・わかりやすい解説

シンパー
Andreas Schimper
生没年:1856-1901

ドイツの植物学者。1880-83年に北アメリカと西インド諸島,86年にブラジル,89年にはスリランカセイロン)とジャワなど世界各地の調査を行った。また98-99年にはバルディビア号による深海探検に参加した。これら世界各地の調査成果に基づいて,植物地理学の研究に向かい,大著《生理学的基礎に立つ植物地理学》(1898)を著した。これは,植物分布に及ぼす環境要因(水,温度,光,空気,土壌生物)と,それらと関連した地球上の植生群系を,多くの図や写真を入れてまとめた著書で,植物地理学の古典として有名である。ほかに,《アメリカの寄生植物》(1883),《熱帯アメリカにおける植物とアリの相互関係》(1888),《インド,マレーシア海浜植物》(1891)などの著書がある。また,シンパーとほぼ同時代のドイツで,区系的な植物地理学や植物分類学を発展させた学者にエングラーH.G.A.Engler(1844-1930)が,気候区分を体系化した学者にW.P.ケッペンがいる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シンパー」の意味・わかりやすい解説

シンパー
しんぱー
Andreas Franz Wilhelm Schimper
(1856―1901)

ドイツの植物地理学者。ストラスブール(シュトラスブルク)に生まれる。父も植物学者であり、ほかに同じ家系から3人の著名な植物学者が出ている。ストラスブール大学学位を得たあと、ド・バリAnton de Bary(1831―1888)の研究室に入り、植物の研究に専念、初期には植物の細胞の中でデンプン粒の形成される過程を追究した。1882年、ボン大学の植物学研究所へ移り、16年半を過ごした。熱帯を中心にした長期の海外旅行を5回にわたって行い、植物の生存と環境との関係を生理学的に基礎づけようとする学風を深めた。1898年に始まったドイツ深海探検隊に参加。バルディビア号に乗船して大西洋インド洋、南氷洋を調査したが、その間に感染した悪性マラリアが悪化し、バーゼルで不帰の客となった。主著は『生理学に基づく植物地理学』Pflanzengeographie auf physiologischer Grundlage(1898)。

[渋谷寿夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シンパー」の意味・わかりやすい解説

シンパー
Schimper, Andreas Franz Wilhelm

[生]1856.5.12. シュトラスブルク
[没]1901.9.9. バーゼル
ドイツの植物学者。植物分布に基づく大陸の区分法を創始し,植物地理学,生態学の発達に大きな影響を与えた。 1878年,シュトラスブルク大学より学位を得る。一時アメリカに留学。ボン大学 (1881~98) ,バーゼル大学教授 (98~1901) 。その間,ブラジル,ジャワ,東アフリカ,カナリア諸島で熱帯植物の調査を行い,研究成果を『生理学に基づく植物地理学』 Pflanzen-Geographie auf physiologischer Grundlage (1898) にまとめた。これは気候学や植物生理学を基礎として世界の植物分布を論じたものであり,植物が分布を拡大したり維持したりする機構についての記述もある。このほか,植物生理学や細胞学の分野でも業績がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android