ケッペン(読み)けっぺん(英語表記)Wladimir Peter Köppen

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケッペン」の意味・わかりやすい解説

ケッペン
Köppen, Wladimir Peter

[生]1846.9.25. ロシアサンクトペテルブルグ
[没]1940.6.22. オーストリアグラーツ
ロシア生まれのドイツの気候学者。ロシアの歴史研究家ペーター・フォン・ケッペン Peter von Köppen(1793~1864) の子。1866年ハイデルベルク大学で植物学を専攻。1869年ライプチヒ大学で学位取得,ペテルブルグ中央物理観測所助手。1874~1919年ハンブルクのドイツ海軍気象台研究主任。気象学,地球物理学,生物学など多くの分野で活躍したが,特に気候学の業績は有名で,近代気候学の父と呼ばれている。ドイツにおける最初の印刷天気図の作成,観測法の確立,観測網の整備などに貢献。世界の植物分布を考慮したケッペンの気候区分はよく知られている。また古気候学研究は女婿のアルフレート・ロタール・ウェゲナーとの共著『地質時代の気候』Die Klimate der geologischen Vorzeit(1924)にまとめられ,不朽の古典として知られるとともに,ウェゲナーの大陸移動説形成に重大な影響を与えたといわれる。種々の社会改革事業にも参加し,広範囲の活動を展開。主著『気候学概説』Grundriss der Klimakunde(1931)。

ケッペン
Koeppen, Wolfgang

[生]1906.6.23. グライフスワルト
[没]1996.3.15. ミュンヘン
ドイツの社会派作家。俳優ジャーナリストを経てオランダシナリオを書く。巧みなモンタージュ的手法と繊細な文章が特徴。小説『不幸な愛』 Eine unglückliche Liebe (1934) ,『草のなかの鳩』 Tauben im Gras (51) ,『温室』 Das Treibhaus (53) ,『ローマに死す』 Der Tod in Rom (54) のほか,現代の模範的な散文といわれる旅行記『ロシアとほかの国々へ』 Nach Rußland und anderswohin (58) など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケッペン」の意味・わかりやすい解説

ケッペン(Wladimir Peter Köppen)
けっぺん
Wladimir Peter Köppen
(1846―1940)

ドイツの気候・気象学者。ロシアのペテルブルグに生まれる。地理学者で歴史学者であった父の影響で旅行するうちに、植物分布と気候の関係に興味をもった。ペテルブルグ大学で植物学を学んだのち、ハイデルベルク大学、ライプツィヒ大学に学ぶ。ペテルブルグ中央物理観測所の助手を経て、ハイデルベルク海洋気象台で暴風雨警報・海洋気象部門を担当。1918年、世界の気候区分の基礎部分を「気温・降水量の年変化に基づく気候分類」として発表し、1923年に完成した。これは「ケッペンの気候区分」として知られる。退職後はオーストリアのグラーツに住み、ガイガーRudolf Geiger(1894―1981)とともに『気候学ハンドブック』全5巻を編集した。

[吉村 稔]


ケッペン(Wolfgang Koeppen)
けっぺん
Wolfgang Koeppen
(1906―1996)

ドイツの作家。俳優、演出家、ジャーナリストなど多彩な活躍ののち、ナチス時代には一時オランダに亡命。戦後は1950年代初期の西ドイツ社会を風刺した一連の小説で脚光を浴び、とくに政治の腐敗を暴いた『温室』(1953)でアクチュアルな作家となった。その後は旅行記やエッセイなどの領域に埋もれていたが、76年に自伝風の小説『青春』を発表して再度注目され、92年には強制連行を生きのびた実在するユダヤ人の手記のかたちをとった大作『ヤーコプ・リットナーの地下牢の記録』を完成した。

[早崎守俊]

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