ジュネーブ協定とはジュネーブで開かれた国際会議において妥結された協定をいい、第二次世界大戦後ではおもにインドシナ休戦協定とラオス中立協定をさし、一般にジュネーブ協定という場合にはインドシナ休戦協定を意味する。インドシナ休戦協定は、交戦当事者のベトナム民主共和国(北ベトナム)、ベトナム国(南ベトナム)、ラオス、カンボジア、フランスの5か国にアメリカ、イギリス、ソ連、中国の4か国を加えた9か国が参加して、ディエン・ビエン・フー陥落の翌日(1954年5月8日)から討議が開始され、7月21日に妥結した。この協定は、ベトナム、ラオス、カンボジアに関する三つの休戦協定(敵対行為の終止に関する協定)、各国政府が休戦協定の履行に関してそれぞれ単独に行った九つの宣言、会議の最終宣言との合計13通の文書からなる。
ベトナム休戦協定は1946年以来8年にわたるフランスとベトナム民主共和国との間のインドシナ戦争に終止符を打つもので、(1)敵対行為の停止、(2)兵力引き離し(北緯17度線の南方で、第9号公路のやや北方に暫定軍事境界線を設け、ベトナム民主共和国軍は境界線の北側に、フランス連合軍(フランス兵、ベトナム・ラオス・カンボジア兵、外人部隊からなる)は南側に引き揚げる、軍事境界線の両側に幅5キロメートルの非武装地帯を設け、軍隊、軍需品、軍事物資はすべて非武装地帯から撤退ないし撤去する)、(3)軍事情勢の凍結と非軍事化(増援部隊・補充軍事要員の導入、武器・弾薬・その他軍事物資の搬入、軍事基地の新設を禁止する)を定めたものである。
各国政府の宣言は、自国の領域を軍事同盟に参加させない、侵略政策に利用されることを許さない旨の決意を表明したものである。最終宣言は三つの休戦協定を承認し、各国政府の宣言に考慮を払う(テーク・ノート)ことを約したもので、要点は、(1)軍事境界線は暫定的なもので、政治的、領土的境界ではない、(2)ベトナムでは国際委員会の監視と管理下に1956年7月に総選挙を行って政治問題を解決する、政治問題の解決はベトナムの独立、統一および領土保全を原則として行い、ベトナム住民に基本的な自由を保障する、(3)会議参加国はカンボジア、ラオス、ベトナムの主権、独立、統一および領土保全を尊重し、3国の国内問題に対する干渉をいっさい慎む、というものであった。休戦協定は交戦当事国の軍事代表者間で調印され、したがって一方の調印者はフランス連合軍司令官で、ベトナム国代表は調印に加わらなかった。ベトナム国は休戦協定に反対し、最終宣言には調印しなかった。アメリカも調印しなかった。しかしベトナム国、アメリカとも休戦協定に武力をもって反対することはしない旨を明らかにした。
インドシナ戦争は植民地戦争として出発し、のち冷戦下の国際戦争となって拡大したものだが、その終結案としてジュネーブで提起されたのは民族自決、一種の中立化(外部干渉の停止)、事実上のベトナム分割という方式であった。民族自決と中立化は民族解放闘争の勝利の結果であり、ベトナムの実質的な分割は冷戦のパワー・ポリティックスによる妥協の産物であった。民族自決と領土の分割は矛盾するが、その矛盾を受容することなしには休戦協定をまとめあげることはできなかったであろうし、その妥協がまた次の戦争(ベトナム戦争)を生むことになった。大国間の利害関係を局地問題の犠牲のうえで調節するという戦後処理の図式はドイツ、朝鮮と並んでベトナムにも適用された。
なお、ラオス中立協定は1962年7月23日、ラオスが自ら中立を宣言し、会議参加13か国がこれを尊重する旨を誓ったものである。
[丸山静雄]
『浦野起央著『ジュネーブ協定の成立』(1970・巌南堂書店)』
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…まず,70年9月,リビアが原油公示価格と国際石油会社の所得税率の引上げに成功し,71年2月には,アラビア湾岸6ヵ国と国際石油会社との間にテヘラン協定が結ばれて,所得税率と公示価格の以後5年間の引上げ方式が規定された。さらに72年1月と73年6月には,通貨調整によるドル購買力の低下を補塡(ほてん)するための公示価格引上げ方式を規定したジュネーブ協定と新ジュネーブ協定とが締結された。この公示価格や利益配分率の引上げにとどまらず,石油資源の恒久主権を確保するために,産油国による自主開発と既存産油会社への事業参加がOPECの政策目標として打ち出された。…
…1953年10月に王国政府はフランスとの間で〈友好連合条約〉を結び,これによってラオスは完全独立を達成した。 54年のジュネーブ会議でまとめられたジュネーブ協定のなかのラオス条項は,休戦,外国軍の撤退,休戦監視委員会の設置,国内統一のための総選挙,パテト・ラオの北部2省への集結などを定めた。しかしアメリカは,東南アジア条約機構(SEATO)を発足させ,王国政府へ軍事援助を始めた。…
※「ジュネーブ協定」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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