翻訳|scuba
圧縮空気を充填(じゅうてん)したエアタンクと呼吸ガスを供給するためのレギュレーター(自動調整器)からなる潜水器。スキューバはself-contained underwater breathing apparatus(自給気潜水器)の頭文字をとって名づけられた。一般に用いられているアクアラングaqualung(アクアはラテン語で水、ラングは英語で肺の意)は、商標名のAqua-lungに由来し、スキューバの商品名である。なお、呼吸ガスを船上から供給するものを他給気潜水器という。
スキューバは1943年フランスのJ・Y・クストーとE・ガニャンにより考案された。これは圧縮空気使用の自給式潜水器アクアラングで、初めは軍事目的として開発され、フロッグメン(潜水工作員)が防潜網を破るためなどに使用された。使いやすく水中での行動力があるため、1950年代には世界中に普及し、サルベージ事業、海洋調査・研究はもとより、マリンスポーツに欠かせないものとなった。
[山田 稔]
scuba diving スキューバを用いて潜水すること。業界ではスクーバ潜水ということが多い。スキューバ(エアタンク、レギュレーター)のほかに潜水マスク、フィン(足ひれ)、ウェットスーツ、浮力調整具、ウェイトベルト、ダイバーズウォッチ、水深計などの装備品を身に着けて潜水する。他給気潜水surface supply divingと比較すると、水中を自由に行動できる、軽量である、取扱いが容易である、などの特長があり、水中の調査、撮影などの軽作業に使われるほか、レジャーとしてマリンスポーツに広く親しまれている。そのための装備としては、ほかにダイバー・ナイフ、水中銃などがある。スキューバダイビングは危険性が高いので、スキンダイビングなどの基礎的トレーニングが必要である。
スキューバダイビングでは携行できる空気量が限られているため、潜水時間、潜水深度が制限される。ダイバーは水圧に応じた圧力の空気を吸入するので、深度が深くなるにしたがい、潜水時間が短くなり、14リットルのタンク1本で、水深10メートルでは40分、20メートルでは25分、30メートルでは20分である。この空気消費時間(潜水時間)は、経験、水中での作業量、個人差によって異なり、標準の2倍を消費してしまう場合もある。
スキューバダイビングは、船上からダイバーの位置が確認しにくい、ホースなどによるダイバーとの接続がないためにトラブル時に救助しにくいなどの理由から、窒素の麻酔作用によって危険性の認知ができなくなる水深40~50メートルを超えて潜水しないよう指導されている。
[山田 稔]
『アメリカスポーツ潜水協議会編、小林庄一・日下部暘訳『スポーツ潜水の科学と実際』(1969・日本YMCA同盟出版部)』
スクーバとも表記する。名称はself-contained underwater breathing apparatus(自給気式潜水器)の頭文字にちなみ,ダイバーがみずから呼吸媒体とそのシステムを背負い,海上からの支援なしに自由に海中を泳ぐことができる潜水器をいう。最も一般的なものは一度使用した空気を放出する開放回路式スキューバで,高圧空気の入ったタンク,レギュレーター(圧力調整器。高圧空気をちょうどダイバーのいる環境水圧と同じまでに下げる調整器),呼吸装置からなっている。この圧力調整弁は2段になっており,1943年にJ.クストーらによって発明され,46年アクアラングAqua-lung(〈水中の肺〉の意味)という商標で市販されたのが最初である。この発明により,人間の潜水行動は著しく拡大された。この初期のころのレギュレーターはタンクの分岐管のところに付けられ,海水圧と同じ圧力まで下げられた空気がホースによって右肩から呼吸器に供給され,吐き出された空気は左肩の方の別のホースを通って排出される方式となっていた。次に,タンクの分岐部で圧力を一回下げ,マウスピース部でさらに環境の圧力に合わせるものが出現し,現在では二つの調整弁を小型にしてマウスピースと直結にしたものも出現している。マウスピースのかわりに全面マスクを使用する場合もあるが,このときはダイバーの口が自由になるので,音声による通信が容易になる。高圧タンクはダイバーの背中に置くが,深度や潜水時間に応じて1本もしくは2~3本結合したものを使用する。充てんの圧力は150気圧,内容積は6~14l程度であり,潜水可能時間tは次の式で決定される。
ここで,VCはタンク内の総空気量(l),Veは毎分呼吸量(l/分),Dは潜水深度(m)である。Veは通常の遊泳速度で毎分25~30lであるが,遊泳速度が大きくなると増える。この開放回路型空気式スキューバの発展したものに半閉鎖回路型混合ガス・スキューバ,閉鎖回路型混合ガス・スキューバ,閉鎖回路型酸素スキューバなどがある。いずれも呼気の全部または一部を,炭酸ガスを除去し酸素などを加え再度循環させるもので,同一タンクで長時間の潜水が可能となるが,装置が複雑になる。
執筆者:岡村 健二
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※「スキューバ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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