前4世紀のギリシアの彫刻家。生没年不詳。エーゲ海のパロス島出身。大理石彫刻を得意とし,その作品は量感に満ちた体軀,強い意志の表出をもつことを特徴としている。それは激しい情感を表すヘレニズム美術の先駆を成すものであった。前395年に焼け落ちたテゲアのアテナ・アレア神殿の再建(前340年ころ)に建築家として従事したことが知られる。この神殿の破風を飾っていた彫刻の断片が発見されており(アテネ考古学美術館),それらもスコパスの作であろうと考えられている。スコパスは,彫刻家ブリュアクシス,レオカレス,ティモテオスとともに,ペルシア領カリア地方総督マウソロスの壮大な墓廟マウソレウムの装飾に参加し,その東面の浮彫フリーズを制作したと伝えられる。当地からは,ギリシア人とアマゾン族の戦闘を描いた長大なフリーズの断片が出土しており(大英博物館その他),そのうちのテゲアの彫刻と似た作風を示す部分が,スコパスの手に成るものと推定されている。その他古代の文献は,彼が制作した多くの神々や半神の像があったことを伝えているが,それらの原作はのこされていない。しかしローマ時代の模刻像のいくつか,たとえば《踊るマイナス》(ドレスデン国立美術館),《ランズドーンのヘラクレス》(カリフォルニア,マリブ美術館),《メレアグロス》(バチカン美術館その他)などが,彼の作風を伝えるものと考えられている。
執筆者:中山 典夫
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生没年不詳。古代ギリシアの彫刻家。プラクシテレス、リシッポスと並ぶ紀元前4世紀のもっとも著名な彫刻家。パロス島出身。父アリスタンドロスは青銅彫刻家。前377年ごろアテネに赴き、以後アッティカ、ペロポネソス、小アジア各地で制作。その作風は、プラクシテレスが神々の優美な様式を確立したのに対し、人間の内的感情の表出に傑出し、ヘレニスティック期彫刻の先駆をなした。古代の文献とその様式から彼の作と推定されるものに、テゲアのアテナ・アレア神殿の破風(はふ)彫刻とアスクレピオスとヒュゲイアの像(アテネ国立考古博物館)、エフェソスのアルテミス神殿列柱の浮彫り、ハリカルナッソスのマウソレウム東フリーズの浮彫り(大英博物館)などがある。いずれも深く彫られた目や衣装の襞(ひだ)の表現に彼の特徴がみられる。
[前田正明]
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前4世紀
大理石の島パロスの出身で,プラクシテレスと並び称せられる前4世紀ギリシアの代表的彫刻家。マウソロスの廟の建築装飾において指導的役割を果たし,現存の部分は彼の男性的作風を示す。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…前5世紀末のペロポネソス戦争,前4世紀の絶えまないポリス間の対立・抗争を通じて,人びとの感情・思想はより現実的・人間的になり,宗教的関心もしだいに弱まった。この傾向を反映して,後期クラシックの彫刻家プラクシテレス,スコパス,リュシッポスらは,優雅で人間的情感にあふれる彫像を作った。
[ヘレニズム時代(前320‐前30)]
アレクサンドロス大王の没年ころから,プトレマイオス朝エジプト王国の滅亡までの時代をいう。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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