プラクシテレス(その他表記)Praxitelēs

デジタル大辞泉 「プラクシテレス」の意味・読み・例文・類語

プラクシテレス(Praxitelēs)

古代ギリシャの彫刻家。前4世紀に活躍。優美な裸体神像を得意とした。オリンピアヘラ神殿の「ヘルメス」が有名。生没年未詳。

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精選版 日本国語大辞典 「プラクシテレス」の意味・読み・例文・類語

プラクシテレス

  1. ( Praxitelēs ) 紀元前四世紀のギリシアの彫刻家。フェイディアスと並び称される巨匠。代表作クニドスアフロディテ」「ディオニソスを抱くヘルメス」。生没年未詳。

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改訂新版 世界大百科事典 「プラクシテレス」の意味・わかりやすい解説

プラクシテレス
Praxitelēs

前4世紀のギリシアの彫刻家。生没年不詳。アテナイ出身で彫刻家ケフィソドトスの子。クラシック後期の代表的な大理石彫刻家で,とくに大理石の特性を生かした表面処理の卓越した技術は,古代において高く評価されていた。彼は多くの神像を制作したが,それらは,もはや礼拝者を威圧する絶対者としてではなく,人間的な情緒をもつ,親しみやすい神の姿として表された。ローマ時代の旅行家パウサニアスがオリュンピアのヘラの神殿内で見たプラクシテレス作の《幼児ディオニュソスを抱くヘルメス》(オリュンピア美術館)の像は,1877年ドイツの発掘隊によって,ヘラ神殿の遺跡から発見された。それは幼い弟ディオニュソスを優しくあやす青年神ヘルメスの姿を表したものであった。プラクシテレスはまた,愛の女神アフロディテを,女性の官能的美しさの象徴として表現した美術家でもあった。小アジアの港町クニドスの住民が買い取った彼のアフロディテ像は,愛の女神を全裸で表した最初の彫刻作品であった。古代世界に広く喧伝され,女性美の規範とされたこの女神像《クニドスのアフロディテ》の原作は失われてしまったが,50点を超える模刻像がのこされており(バチカン美術館その他),多くの研究者によってその復元が試みられている。同じく模刻像だけでのこる作品《蜥蜴(とかげ)を殺すアポロン》(バチカン美術館その他)は,かたわらの樹に寄り掛かり,その樹にはい上るトカゲを戯れに殺すアポロンを,成熟しきらぬ少年の優雅な姿で表したものであった。さらに美しい上半身を露わにした《アルルビーナス》(ルーブル美術館その他)もまた,プラクシテレスの原作からのローマ時代の模刻像であったと考えられる。このようなプラクシテレスの芸術は,ヘレニズム美術,とくにアレクサンドリアの美術に大きな影響を与えた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラクシテレス」の意味・わかりやすい解説

プラクシテレス
ぷらくしてれす
Praxiteles

生没年不詳。古代ギリシアの彫刻家。彫刻家ケフィソドスを父にアテネに生まれた。活躍期は紀元前370年から前330年ごろ。彼は大理石の彫像に卓抜な技量を示し、優美で気品のある神像を制作し、古典後期の「優美な様式」を創造、前4世紀アッティカ派のもっとも優れた彫刻家となった。古代の文献によれば、彼は前350年ごろ、小アジアのクニドスとコス島からそれぞれアフロディテ(ビーナス)像の注文を受け、前者には裸体像、後者には着衣像を制作、前者は女神を全裸で表現した最初のモニュメンタルな像(ローマ時代の模刻がバチカン美術館にある)で、その優美な姿態は以後の女性の裸体表現の原形となった。また、幼児ディオニソスを抱く「ヘルメス」(1877年にオリンピアで出土。オリンピア考古博物館)は、彼の原作説と模刻説が問題とされるが、女性的な甘美な彼の様式を伝える貴重な作品である。このほか「トカゲを殺すアポロン」(バチカン美術館)、「サティロス」(ローマ、カピトリーノ美術館)など、彼に帰せられる幾点かの作品がローマ時代の模刻で残されている。

[前田正明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プラクシテレス」の意味・わかりやすい解説

プラクシテレス
Praxitelēs

ギリシアの彫刻家。前4世紀中頃に活躍したアテネ人で,彫刻家ケフィソドトスの子。繊細,優美な人間的感情をもつ神像を多く制作した。主要作品は,裸体の女神像としては最初の『クニドスのアフロディテ』 (ローマ時代模刻,バチカン美術館ほか) ,1877年オリンピアのヘラ神殿跡から出土した大理石の『ヘルメス』 (オリンピア考古学博物館,模刻説もある) ,『とかげを殺すアポロン』 (ローマ時代模刻,バチカン美術館) 。

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百科事典マイペディア 「プラクシテレス」の意味・わかりやすい解説

プラクシテレス

前4世紀のギリシアの彫刻家。アテナイ生れ。大理石の巧みな表面処理と,流動的な曲線美を特徴とし,神像彫刻に初めて人間的な情感を与えた。作品は,《幼児ディオニュソスを抱くヘルメス》(模刻説もある)のほか《蜥蜴(とかげ)を殺すアポロン》《クニドスのアフロディテ》の模刻が残る。
→関連項目スコパス

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「プラクシテレス」の解説

プラクシテレス
Praxiteles

前4世紀

アテネ生まれの古代ギリシア最大の彫刻家の一人。肉体の優美さ,端麗さを表現。「クニドスのアフロディテ」「ディオニュソスを抱くヘルメス」などの傑作を残す。

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旺文社世界史事典 三訂版 「プラクシテレス」の解説

プラクシテレス
Praxiteles

生没年不詳
前4世紀半ばに活躍した古代ギリシアの彫刻家
甘美な作風。代表作『ヘルメス像』『クニドスのアフロディテ』。

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世界大百科事典(旧版)内のプラクシテレスの言及

【アフロディテ】より

…崇拝の中心地はキプロス島,キュテラ島,および彼女が売淫の女神としてまつられていたコリントスが名高い。美術では,プラクシテレス作の《クニドスのアフロディテ》(前350ころ)が古代に最も高い評価を得た彫刻であったが,ローマ時代の模刻しか伝わらない。1820年にメロス島で発見されたアフロディテ像《ミロのビーナス》は,ヘレニズム期の傑作としてあまりにも有名。…

【ギリシア美術】より

…前5世紀末のペロポネソス戦争,前4世紀の絶えまないポリス間の対立・抗争を通じて,人びとの感情・思想はより現実的・人間的になり,宗教的関心もしだいに弱まった。この傾向を反映して,後期クラシックの彫刻家プラクシテレス,スコパス,リュシッポスらは,優雅で人間的情感にあふれる彫像を作った。
[ヘレニズム時代(前320‐前30)]
 アレクサンドロス大王の没年ころから,プトレマイオス朝エジプト王国の滅亡までの時代をいう。…

【裸】より

… ゴーギャンのタヒチ紀行《ノア・ノア》は,タヒチの裸体民族は動物の場合と同様,ヨーロッパ人よりも男女の差異がはっきりしていないというが,衣服を着て日常を過ごす人々が裸体に接するときには,芸術的な審美感情よりも官能的な性の魅力を感じることが多い。これは裸に慣れていた古代ギリシアでも同じで,アテナイの彫刻家プラクシテレスが2体のアフロディテ像を彫り,1体は衣を着せ他の1体は裸体としたところ,コスの人々は裸の像を拒んで着衣の方が上品だからとこれを購入した。ところがクニドスの人々は喜んで裸体の像を選び,後にニコメデス王がいくら欲しがっても譲らなかったという(大プリニウス《博物誌》第36巻)。…

【フリュネ】より

…当代一の美女と評判をとって財を成し,テーバイの城壁復旧の資金を寄付して〈アレクサンドロス大王これを破壊するも遊女フリュネこれを再建す〉との銘を刻ませたという。彼女はまた画家アペレス,彫刻家プラクシテレスのモデルとしても知られ,前者の《海から上がるアフロディテ》,後者の《クニドスのアフロディテ》は,ともに彼女を模したものとされる。裁判においてみずから,あるいは弁護に立った雄弁家ヒュペレイデスの要請により胸をはだけ,その美しさで裁判官を感動させて無罪を勝ちとったという話も有名である。…

【ポンペイ】より

…これらは,他の古代遺跡では見ることのできない出土例の豊富さと,2世紀間以上にわたって連続した様相を示していることから,〈古代絵画館〉と通称されるほどである。また彫刻においては前4世紀のプラクシテレスらの模刻が好まれ,教養主義的で装飾的な彫刻に対する好尚があったことを明らかにした。 日常生活のうえでは,食生活,装身具,貸借関係,クリエンテラ制(クリエンテス)に基づく選挙,家庭内における信仰などが明らかとなった。…

※「プラクシテレス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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