ストローソン(読み)すとろーそん(英語表記)Sir Peter Frederick Strawson

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストローソン」の意味・わかりやすい解説

ストローソン
すとろーそん
Sir Peter Frederick Strawson
(1919―2006)

イギリスを代表する哲学者の一人。11月23日生まれ。1940年オックスフォード大学哲学・政治学・経済学コースを修了して、文学士(B.A.)となり、一時軍務についたのち、1948年からオックスフォード大学の研究員を務め、1968年ギルバート・ライル後任として同大学哲学教授となる。1950年代以降のイギリス哲学界において、日常言語学派の指導的立場にあり、論理学論理学の哲学、言語哲学、心の哲学、美学倫理学などの諸分野での先端的でかつ影響力の大きい論文を発表するとともに、カント研究においても指導的役割を果たした。また、世界各地で講演を行い、イギリス現代哲学の方法の普遍化のために力があった。これらの功績によって、1977年騎士の称号を授けられている。主著に『論理の基礎』(1952)がある。

土屋 俊 2015年7月21日]

『ストローソン著、常俊宗三郎・木村慎哉他訳『論理の基礎』上下(1974、1976・法律文化社)』『ストローソン著、中村秀吉訳『個体と主語』(1978・みすず書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ストローソン」の意味・わかりやすい解説

ストローソン
Strawson, Peter Frederick

[生]1919.11.23. ロンドン
[没]2006.2.13. オックスフォード
イギリスの哲学者。 1940年オックスフォード大学セントジョーンズ・カレッジ卒業。 1948~68年同大学フェロー,1968~87年同大学教授。日常言語学派を主導し,文 sentenceの有意性と命題 statementの真理性の水準を区別した。また日常言語の分析を通して,真理概念の意味論的解釈,事実との対応を真理とする対応理論を批判し,「真理」 trueという語は同意の表明であると主張。 1950年代半ばから関心は「記述的形而上学」に向かった。著書に『論理学的理論への手引』 Introduction to Logical Theory (1952) ,『個物について』 Individuals (1959) ,"Philosophical Logic" (1967) ,"Logico-Linguistic Papers" (1971) などがある。 1977年ナイトに叙された。

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改訂新版 世界大百科事典 「ストローソン」の意味・わかりやすい解説

ストローソン
Peter Frederick Strawson
生没年:1919-

イギリスの哲学者。オックスフォード大学教授。言語分析を方法として存在論の建設にまで至らんとする。ただしラッセルやクワインなどのように数理論理学の言語に言語の範型をみる立場に反対して,日常言語,とくに主語・述語形式をとる言明のあり方を研究することに問題解決の鍵を求める。カントの影響もある。主著《個体と主語》(1959)。
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世界大百科事典(旧版)内のストローソンの言及

【日常言語学派】より

…日常言語への定位は,存在や善の概念を分析したケンブリッジ大学のG.E.ムーアによって先鞭をつけられ,日常的言語使用のあり方は中期以降のウィトゲンシュタインの考察の中心となった。一方,オックスフォード大学のJ.L.オースティン,G.ライル,ストローソン等もやや独立に日常言語の分析から哲学的問題に接近した。こうして50年代に日常言語学派が形成されたのである。…

※「ストローソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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