15世紀末から18世紀末まで愛好された鍵盤付き撥弦楽器の一種で,その名称はラテン語のspina(棘(とげ))に由来する。ハープシコードと同族の楽器で発音機構も同じであるが,ハープシコードが本来グランド型(鍵盤と弦とが直角)であるのに対して,一般にスクエア型(鍵盤と弦が平行)あるいはトランスバース型(鍵盤に対して弦が斜め)のものを指す。外形は(上から見た場合),スクエア型では長方形か不規則形(五角形が最も一般的であるが台形や六角形,七角形もある),トランスバース型では三角形である。1段鍵盤で,音域は普通3オクターブ半から4オクターブ半,ときに5オクターブに及んだ。音色はスクエア型の方が柔らかく澄んでおり,トランスバース型はやや曇るが,この型は17世紀後半に改良が加えられてハープシコードの音色に近づくと,小型で軽便という利点もあって家庭楽器としてたいへん普及した。ハープシコードと区別されるようなこの楽器独自の語法や作品は特にないが,《ハープシコード・マスター》14巻(ロンドン,1718以前-34)といった曲集は,音楽愛好家たちがこの簡便な楽器で演奏できるようにという意図で出版されたものと思われる。
執筆者:津上 智実
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…この点が,ハンマーで弦を打って音を出すピアノとは大きく異なり,まったく別種のタッチを必要とする。弦を鍵盤と直角に張った現代のグランド・ピアノに似た形であるが,広義には弦の張り方が異なるスピネットやバージナルをも含めてハープシコード族と呼ばれることもある。図に示したように,鍵を打つと鍵の向こう端に立つジャックが飛び上がり,その側面に突き出た鳥の羽軸または革製のプレクトラムが弦を弾き鳴らす。…
※「スピネット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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