日本大百科全書(ニッポニカ) 「スル諸島」の意味・わかりやすい解説
スル諸島
するしょとう
Sulu Archipelago
フィリピン南西部、ミンダナオ島南西部からボルネオ島北東部へ約320キロメートルにわたって連なる島群。人口54万(2000)。より現地音に近い正確な表記はスルー諸島またはスールー諸島となる。なかにバシラン島、ホロ島、タウイタウイ島の3島などを含む。フィリピン群島を形成する構造線の一つである北東から南西に走る海中の堆(たい)の上にサンゴ礁が発達したものと、火山活動による溶岩や火山砕屑(さいせつ)物が堆積したものがある。ここのサンゴ礁はフィリピンでは代表的なものである。島列はかつてはミンダナオ島とボルネオ島を結ぶ陸橋を形成していたと思われるが、その後陥没して小島群に分けられた。各島の海岸線の出入りは大きい。
住民は「モロMoro」と総称されてきた複数の民族集団(タウスグ、サマなど)を主とし、スペイン植民地時代もキリスト教化されずにそれ以前からのイスラム教を信じて現在に至っている。ただし、「モロ」は蔑称(べっしょう)として用いられてきたので、好ましい呼称ではない。彼らは航海や商業に長じ、かつては海賊活動を行い、15世紀から19世紀にはイスラムの王国であるスル王国が栄えた。また、フィリピンからの分離独立を要求し、長らく政治的に不安定な地域となっていたが、1996年のモロ民族解放戦線と政府との和平協定により、この地域でのムスリム(イスラム教徒)の自治が認められた。住民は米、トウモロコシ、キャッサバなどの食糧作物を栽培するほか、近海での漁業に従事する。中心地はホロ島のホロ。
[別技篤彦]