セルビア語/クロアチア語(読み)せるびあごくろあちあご(英語表記)Serbian/Croatian

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

セルビア語/クロアチア語
せるびあごくろあちあご
Serbian/Croatian

旧ユーゴスラビア連邦を構成していた共和国のうち、セルビアツルナ・ゴーラモンテネグロ)、クロアチアボスニア・ヘルツェゴビナなどの地域で話されている諸言語をさす。連邦時代は「セルビア・クロアチア語srpskohrvatski(セルボ・クロアチア語Serbo-Croatian, Serbo-Croatとも)」などと称され、セルビア人やクロアチア人、ボスニア・ヘルツェゴビナのムスリムなど、1500万人以上の南スラブ諸民族に共通の母語として、また、連邦全体のもっとも有力な公用語として機能していた。
 連邦崩壊に伴い、クロアチアはその主要民族語を「クロアチア語」という独立の言語として国語に定め、独自の整備を進めている。連邦崩壊後も、民族構成がことに複雑なボスニア・ヘルツェゴビナのように一民族名で国語を代表する形がとりにくい地域もあり、旧名称の「セルビア・クロアチア語」が便宜的に使われることも少なくなかった。しかし現在(2008年)では各国家体制もしだいに整い、国際的認知も進んで、個別の言語文化を醸成してゆく方向に転換しており、それぞれ独立した「クロアチア語」や「セルビア語」という名称が国外でも定着しつつある。この二つの言語以外にも「ボスニア語」や、これよりさらに認知度はまだ低いが「ツルナ・ゴーラ語」という名称もいずれ受け入れられていく可能性がある。言語的に多くの共通特徴をもちながらも、各地で独自の整備なども進んでいる状況にかんがみ、本稿では、連邦時代の公用語であった「セルビア・クロアチア語」と、現在この地域で話されている諸言語とを区別するために、2008年の時点では「セルビア語/クロアチア語」という表記を用いる。
 いずれも言語的にはインド・ヨーロッパ語族スラブ語派に属し、スロベニア語、マケドニア語、ブルガリア語とともに南のグループを成す。カトリック圏のクロアチア、およびイスラム圏ではラテン文字を使用するが、正教圏のセルビア、ツルナ・ゴーラではキリル文字が中心で、ラテン文字も併用される。音声面では、音の高低の関わる独特のアクセントが特徴的。各地の口語は母音の違いから、エ、イエ、イの3グループに分かれる。たとえば、クロアチアのザグレブはイエ・グループの、セルビアのベオグラードはエ・グループの、各々中心地である。文法的特徴については大きな相違点はみられない。典型的屈折タイプの言語として、名詞は男・女・中三つの文法性を有し、呼格を含む7個の格と単数か複数かの違いに応じて格変化する。動詞における完了・不完了2種のアスペクトの区別など、スラブ諸語に固有の特徴を有する一方、とくに東南部ではバルカン言語的な特徴もみられる。トルコ支配の長かったセルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナなどでは、トルコ語からの借用語が多い。ほかにドイツ語からの借用語も多いが、近年は英語からの借用語も増えている。[中島由美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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