翻訳|tuxedo
燕尾服に次ぐ男性の夜間の準礼服。アメリカで始まった呼称で,イギリスではディナー・ジャケットと呼ぶ。1880年ころ,ドレス・コート(燕尾服)に代わる略式の衣服としてあらわれた。その後,ニューヨーク州タキシード・パークのクラブの会員たちが簡単な夕食会などに気楽に着られるようにと採用したことから一般に広まった。黒い蝶ネクタイをつけるところから,燕尾服の〈ホワイト・タイ〉に対して〈ブラック・タイ〉とも呼ばれる。形は背広服に準じるが,生地は黒か濃紺の礼服地を使用,前の打合せはシングル(一つボタン)かダブル(四つボタン),襟は繻子などの拝絹をつけたピークド・ラペル(剣襟)かショール・カラーとする。チョッキは上着と共布で,形は燕尾服のものと同じであるが,1930年代末からインド人の使うサッシュをヒントにつくられた腹巻状のカマーバンドcummerbundを用いるようになった。ズボンも上着と共布で,脇の縫目にブレードを1本つける。胸にひだのあるドレッシーなホワイト・シャツに黒のネクタイを蝶結びにする。帽子,靴などは燕尾服に準じる。
→礼装
執筆者:星野 醍醐郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
タキシード・コートの短縮形で、ディナー・ジャケットdinner jacketと同義。燕尾服(えんびふく)に準じる男子用の略式夜会服。前打合せはシングル、襟は拝絹地(はいけんじ)(厚地の絹織物。フェーシング・シルク)付きショールカラーが代表的であるが、ピークド・ラペルやダブル・カラーのものもある。生地(きじ)は黒または紺のドスキン、カシミヤなどを用い、ズボンも上着と同質にするのが正式である。ベストまたはカマーバンドcummerbandが組み合わされ、カマーバンドと共地の蝶(ちょう)ネクタイをつけるが、元来は黒(ブラック・タイ)と決まっていた。近来は避暑地や芸能界などで用いられる場合、とくに生地、形とも変わり型が多くみられる。名称はアメリカ、ニューヨークの特定居住区の一種であるタキシードパークにあるカントリークラブにちなむもので、1886年、グリスウォルド・ロリラードGriswold Lorillardが初めてイギリスのディナー・ジャケットをここで披露した。
[菅生ふさ代]
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