繻子(読み)シュス

デジタル大辞泉 「繻子」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐す【×繻子/朱子】

繻子織りにした織物。帯地・半襟・洋服地などに用いられる。サテン

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精選版 日本国語大辞典 「繻子」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐す【繻子・朱子】

  1. 〘 名詞 〙 絹織物一種。織物の表面に経(たていと)だけか、緯(よこいと)だけを浮かせたもので、表面はなめらかでつやがある。経、緯に本絹練糸を用いたものを本繻子といい、その他糸の種類によって、綿繻子毛繻子、繻子羽二重などさまざまな種類がある。
    1. [初出の実例]「繻子一段」(出典:蔭凉軒日録‐永享一二年(1440)五月三日)
    2. 「袖口の繻子(シュス)のぬめりに見ほれけん、すべりこんだる風の梅が香」(出典人情本春色梅児誉美(1832‐33)序)

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改訂新版 世界大百科事典 「繻子」の意味・わかりやすい解説

繻子 (しゅす)

朱子とも書く。繻子組織による織物をさし,英語では絹製の場合はサテンsatin,綿製,毛製の場合はサティーンsateenと区別する。その特色は平織や綾織に比して経(たて)糸が密で,組織点がまばらに飛んで連続していないため表面が経糸の浮糸に覆われ,滑らかで光沢に富み,かつ柔軟なことにある。反面,組織点の間隔が広くなるほど織物としての堅牢性を欠き,摩擦に弱いという欠点も生じる。経糸5本,緯(よこ)糸5越の組合せ,すなわち綜絖5枚をもって製織するものを最小単位として,それ以上の枚数(7枚,8枚,9枚,10枚,11枚,12枚等)のものを作ることができるが,一般には五枚繻子と八枚繻子の地合いのものが最も多い。また絹糸を精練し,必要に応じて染色した後に繻子織にしたものを本繻子と称し,生糸で織った後に精練,染色,仕上げをしたものを生繻子,あるいは後練(あとねり)繻子という。

 繻子組織は平組織,綾組織とともに織物の基本組織の一つに挙げられるが,発生的には最も遅く,中国では宋代以降にはじまる。日本には中国の元代に当たる銘文をもつ繻子地の金襴(永和4年(1378)銘,高野山天野社伝来。舞楽装束,紺繻子地牡丹唐草文金襴裲襠(りようとう))などが現存しており,14世紀にはこの種の織物が舶載されていたことが知られる。しかし実際に日本で中国の製法にならって繻子が織製されるようになるのは,室町時代末の天正年間(1573-92)とされている。江戸時代には京都西陣を中心に製織されたが,天保年間(1830-44)にはその技術が桐生に伝えられた。近世以降,繻子組織を基本とした紋織物も多種産出され,緞子(どんす),綸子(りんず)をはじめ,金糸を織り入れた繻子地の金襴,多色の緯糸を織り込んだ繻子地の錦,すなわち繻珍(しゆちん)などが製織された。また絖(ぬめ)と呼ばれる絹織物は特に地合いの薄い繻子織物で,帛(はく)面がきわめて滑らかで光沢に富むものをさす。現在では経糸に生糸2本を引きそろえ,緯糸に同じく生糸4~6本を引きそろえたものを用いて八枚繻子組織とし,精練後に厚い裏糊を施したものをいう。

 繻子の材質は絹にかぎらず,経に絹,緯に木綿を用いた交織の繻子,経・緯糸とも綿糸を用いた綿繻子,経に綿糸,緯に毛糸を用いた毛繻子,さらに化繊によるものなどがある。用途は,江戸時代にはしなやかな光沢のある特性を生かして小袖や帯,能装束の摺箔(すりはく),縫箔,狩衣などに広く用いられてきたが,現在の着物では花嫁の打掛以外にはあまり単独で用いられることはなく,帯やコート地に利用されているのにとどまる。しかし洋服では裏地や婦人服地,下着ほか傘地などその用途はきわめて広い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「繻子」の意味・わかりやすい解説

繻子
しゅす

「朱子」とも書く。綾(あや)織のように組織点が連続していることなく、組織点を一定の間隔に均等して配置した組織の織物。平織、綾織とともに、織物の三原組織として知られている。組織としては、一完全(織物組織を構成する一単位)において経(たて)糸はただ1回だけ緯(よこ)糸と交錯するだけであるから、平織または綾織に比べると、織物の表面が著しく滑らかで、光沢のあるのが特徴であるが、組織点が少ないため、織物の地質が弱いのが欠点である。そこで組織点を規則正しく均一に等距離に配置するため、飛数(とびすう)というものを用い、斜文が織面に現れないように考慮されている。したがって一完全が大きくなると浮き糸が長くなるため、一般には五枚繻子か七枚繻子が用いられる。

 繻子織の種類には、経糸を多く浮かせた経繻子と、撚糸(ねんし)を多く浮かせた緯繻子とがある。普通には経繻子が多いが、起毛の関係で紡毛の織物は緯繻子とすることが多い。

 繻子織は、浮き糸が多いために織物としての耐久力からいうと平織や綾織に及ばないが、浮き糸に絹、人絹、フィラメント糸など光沢の強い原糸を使うと、光沢に富んだ織物となる。これには本絹繻子、人絹繻子、絖(ぬめ)、タンタンピースなどがある。また経繻子と緯繻子では光線の反射ぐあいが異なるので、地を経繻子で織り紋を緯繻子で織って同じ無地で紋様を表すことができる。このような組織には紋繻子、紋繻子縮緬(ちりめん)、ダマスクなどがある。また緯繻子の場合では、緯糸で長い浮きができるため、これに多彩色の緯糸や、金銀糸を使って地の組織に織り込めば、錦(にしき)、ブロケードなどになる。そして緯糸の浮きが長いことは、起毛機にかけたとき毛羽立てやすいことから、綿ネル、紡毛織物のように起毛して仕上げる織物に使われ、チンチラ、ビーバー、ベロアなどがこれにあてられる。

 このほか、組織点をいろいろ増やしていくと、重ね繻子、花崗(かこう)織、梨(なし)地などの誘導組織がつくられる。

[角山幸洋]

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百科事典マイペディア 「繻子」の意味・わかりやすい解説

繻子【しゅす】

朱子とも書く。織物の三原組織の一つ(織物組織)で,この織り方による織物の総称。英語では絹製のものをサテンsatin,綿の場合はサティーンsateenと呼ぶ。経(たて)糸または緯(よこ)糸が表面に長く浮いて,一方向に渡っているように見え,浮いている方向により経繻子(表繻子),緯繻子(裏繻子)という。また浮く糸が他の糸を飛び越す数により5枚繻子,8枚繻子などという。織模様を表した紋繻子,表裏別色で繻子織にした昼夜繻子などがある。本来は絹だが近年は綿,毛,化繊,合繊も用いられる。光沢に富み,すべりがよいので,装飾的な衣料,帯地,袋物,裏地などに用いる。
→関連項目綿織物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「繻子」の意味・わかりやすい解説

繻子
しゅす

「サテン」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の繻子の言及

【織物】より

…斜文組織はこのように組織点がとぶから,枚数が多くなればそれだけ織物としての堅牢さが失われることとなり,実用的には六枚綾ぐらいが限度である。しかし組織点が遠のくことは,それだけ布面が平滑になり,絹などはその艶が美しく布面に表れるから,経糸あるいは緯糸をとばしながら織物の堅牢度を保つよう,組織点を斜文組織とは違ってできるだけ広く一様に配列した組織を,繻子と呼んでいる。したがって,繻子組織の織物(繻子)では,経糸あるいは緯糸が密着し,組織点はまばらにとんで連続しないから,その表面は経糸または緯糸だけでできているように見え,布面は一層滑らかで,光沢が強く,柔軟さが増すのである。…

※「繻子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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