タバコモザイクウイルス(その他表記)tobacco mosaic virus

デジタル大辞泉 「タバコモザイクウイルス」の意味・読み・例文・類語

タバコモザイク‐ウイルス(tobacco mosaic virus)

タバコの葉にモザイク病を起こすウイルス。初めて結晶化されたウイルスとして有名。

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精選版 日本国語大辞典 「タバコモザイクウイルス」の意味・読み・例文・類語

タバコモザイク‐ウイルス

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] tobacco mosaic virus ) タバコの葉にモザイク病をおこすウイルス。一九三五年、スタンリーによって精製結晶化され、分析の結果、核蛋白質であることが判明。この研究は生化学発展に大きく貢献した。

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改訂新版 世界大百科事典 「タバコモザイクウイルス」の意味・わかりやすい解説

タバコモザイクウイルス
tobacco mosaic virus

タバコモザイク病の病原体TMV略称。長さ300nm,幅15nmの棒状をしたウイルスで,ウイルス粒子核酸タンパク質から構成されていて,分子量はおよそ4000万である。中心部に分子量20万の1本鎖の核酸(RNA)をもち,その回りに分子量1万8000の外被タンパク質がおよそ2000個取り巻いている。

 タバコモザイクウイルスは,ウイルス学の歴史上重要な研究対象であった。タバコモザイク病は,タバコの葉の表面に緑色の斑が現れ,葉の形がいびつになる病気として,古くから知られていたが,ながらく原因不明であった。1892年にイワノフスキーDmitri Alexevitch Iwanowsky(1864-1920)は,タバコモザイク病のタバコの葉の汁液を細菌ろ過器でろ過して,そのろ過液に病原性があることを見いだした。これが,ろ過性病原体すなわちウイルスの存在を示した最初の実験である。さらにタバコモザイクウイルスは,1935年スタンリーWendel M.Stanley(1904-71)によって,ウイルスとして初めて結晶として取り出された。それまでウイルスは細菌と同じような微生物であると信じられていたので,スタンリーの実験結果は,ウイルスは生物であるのか,また生命とは何なのかという議論を巻き起こした。55年には,フランケル・コンラートHeinz Fraenkel-Conrat(1910-99)らによりウイルス粒子の構成材料であるタンパク質と核酸から,感染性をもったタバコモザイクウイルスの再構成がなされたが,これは構成材料の自己集合による形態形成の最初の実験例となった。その後もタバコモザイクウイルスについては詳細に研究がなされている。
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百科事典マイペディア 「タバコモザイクウイルス」の意味・わかりやすい解説

タバコモザイクウイルス

略称TMV。植物ウイルスの一種。タバコをはじめ,ナス科,キク科,マメ科など22科,200種以上の植物に寄生し,モザイク病を引き起こす。接触伝染や土壌伝染によって広がるが,媒介生物はいない。ウイルス粒子は長さ300nm,直径18nmの棒状で,約6400ヌクレオチドの1本鎖RNAと,それを包んでらせん状に並ぶ約2100個の外被タンパク質から構成されている。古くからよく知られているウイルスで,生化学的,分子生物学的研究が最も進んでいる。→植物ウイルス病
→関連項目ウイルス病スタンリー

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化学辞典 第2版 「タバコモザイクウイルス」の解説

タバコモザイクウイルス
タバコモザイクウイルス
tabacco mosaic virus

略称TMV.タバコのモザイク病の病原体で,1935年,W.M. Stanley(スタンリー)によって結晶状で取り出され,その粒子の大きさは直径15~18 nm,長さ300 nm のさお状,分子量4×107 である.TMV粒子の化学組成はタンパク質が95%,RNAが5% である.すなわち,約2130分子の同一のタンパク質が約6000個のヌクレオチド鎖をもつRNAを中心にらせん状につらなっている.このタンパク質は分子量1.7×104,アミノ酸基を158個もち,その配列も決められ,N末端がアセチル化されているタンパク質である.また,TMV-RNAは一本鎖RNAで,このRNAはDNAと同じように遺伝情報をもち,RNAそれ自体も感染性をもっている.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タバコモザイクウイルス」の意味・わかりやすい解説

タバコモザイクウイルス
tobacco mosaic virus

植物ウイルスの一種で,タバコやトマトなどの葉に濃淡緑色の斑点を生じさせたり,ちぢれさせたりする。 TMVと略記する。 1935年にウェンデル・スタンレーがこのウイルスを結晶として単離することに成功した。RNAウイルスであってデオキシリボ核酸 DNAは含まず,リボ核酸 RNAの細長い芯を蛋白質サブユニットが多数囲んで筒状となり,全体は長さ 280nm,径 15nmの六角棒状をなす。 (→モザイク病 )

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