ダイウイキョウ(読み)だいういきょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダイウイキョウ」の意味・わかりやすい解説

ダイウイキョウ
だいういきょう / 大茴香
[学] Illicium verum Hook.f.

シキミ科(APG分類:マツブサ科)の常緑小高木。トウシキミともいう。中国広東省からインドに及ぶ地域の原産。高さ10~14メートル。葉は革質、長楕円(ちょうだえん)形で互生し、枝の先では輪生状に密につく。花は春と秋に咲き、花弁は赤色で、6~8枚が2~3輪生する。萼片(がくへん)は黄緑色で3枚。雌しべの内部は6~8個の心皮が輪状に並ぶ。果実は赤褐色で、袋果が星状に並び、つやのある茶色の扁円(へんえん)形の種子が1個ずつ入っている。熟すと木質化して各片が裂ける。果実の木片状の莢(さや)はよい香りがあり、セリ科(APG分類:セリ科)のウイキョウアニスに似た風味と苦味がある。これを乾燥したものが大茴香(だいういきょう)とか八角(はっかく)茴香(英名スターアニスstar anise)の名で市販されている。この呼び名は果実の形に由来する。粉末にして中華料理の五香粉(ウーシャンフェン)の材料とされる。香りの精油成分はプロトカテク酸シキミン酸およびアネトールで、3~5%含まれる。薬用として健胃剤、駆風剤、浴湯料などに使われる。日本に自生する近縁種のシキミの果実や種子はダイウイキョウによく似ているが、猛毒がある。

星川清親 2018年7月20日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ダイウイキョウ」の意味・わかりやすい解説

ダイウイキョウ (大茴香)
star anise
Illicium verum Hook.f.

果実から中華料理の香辛料の五香粉(ウーシアンフン)を採るシキミ科の常緑低木。トウシキミともいう。原産地は中国広西チワン族自治区からインドシナにいたる地域で,今はインド南部あたりまで東南アジア大陸部に広く栽培されている。果実は6~8個の袋果が星形に配列した集合果で,直径3~3.5cm。熟すると茶褐色に木質化し,割れてつやのある茶色で扁球形の種子が落ちる。果実を未熟のうちにとって乾燥し,そのまま,あるいは粉末として利用する。また枝葉や果実を蒸留して揮発性のダイウイキョウ油を採る。成分はプロトカテク酸,アネトールなどで,ウイキョウやアニスに似た風味と苦みとがあり,このため果形と香りをあわせてハッカクウイキョウ(八角茴香)とかスターアニスの別名ができた。東洋独特の香味料で,ヨーロッパ人は使わない。また健胃・興奮剤としても利用される。日本産のシキミの果実や種子がこれに似るが,猛毒であるので注意を要する。
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世界大百科事典(旧版)内のダイウイキョウの言及

【シキミ(樒)】より

…【飯島 吉晴】。。…

【シキミ(樒)】より

…山取りしたものが仏事用に売られているため,最近になって絶滅した産地が多い。トウシキミI.verum Hook.f.(八角茴香(ういきよう)または大茴香)の果実は香辛料として有名で,欧米ではスター・アニスstar‐aniseとして珍重されたが,よく似ているシキミとしばしば混同された。シキミは全木有毒で,果実はとくに毒性が強く,甘いが食べると死亡することすらある。…

【シキミ(樒)】より

…仏壇や墓に供えたり,葬式の花に最も普通に使われ,そのため単に〈花の木〉と呼ばれることも多い(イラスト)。シキミ科の2~15mの常緑の樹木。葉は互生し,全縁で先端は急に突出し鈍端。春に咲く花は淡黄緑白色。心皮は8個ほどで輪生し,多数のらせん配列するおしべに囲まれる。果実は袋果で,1個の黄土色の光沢のある種子が入っている。全木に芳香がある。暖温帯,本州,四国,九州,琉球,朝鮮最南部に分布する。日本海側では3mくらいまでの小高木であることが多い。…

※「ダイウイキョウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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