メキシコ,ユカタン州にあるマヤ文化の遺跡。チチェンは〈井戸のほとり〉,イッツァは〈水の魔術師〉を意味するマヤ語である。その名が示すように,天然の井戸〈セノーテ〉を中心に,この町の歴史は展開した。遺跡は3km×2kmの広域にわたり,先古典期からの文化層も見つかっているが,6世紀ころから,プーク様式という,モザイク彫刻で建物の上半分を装飾する建築様式による建造物複合体がいくつか建設され,町は栄え始める。しかし,10世紀に羽毛ある蛇の神ククルカンを掲げる征服者を迎え,前代のプーク様式に,ショチカルコやエル・タヒン(トトナカ文化)の様式が混じった〈ユカタン・マヤ〉様式が生み出される。球技場や戦士の神殿などの新しい様式をもった建物は,基準線をテオティワカン(テオティワカン文化)と同じ方角に定めて建てられた。1000年ころ,チチェン,ウシュマル,マヤパンの三都市同盟が結ばれるが,1200年ころマヤパンに滅ぼされ,チチェンの人々は散り,町は放棄された。
執筆者:大井 邦明
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…また,通常遺存しにくい木製品などの有機質の器物が空気から遮断された状態で残っていることも多い。1853年ころ,大干ばつによってスイスのチューリヒ湖底から新石器時代の杭上住居が見つかり,1922年以来メキシコのチチェン・イッツァ遺跡などでは,セノテという井戸の一種において潜水が試みられ,マヤ文明に属するさまざまな器物が発見されている。これらが初期の例で,1950年代を境にアクアラングが採用され,トルコのケープ・ゲリドニヤやヤシ・アダにおけるJ.F.バスの調査では,ミュケナイ文化の遺物をはじめ古典古代やビザンティン期の難破船を発見するという成果があった。…
…ペンシルベニア・ミリタリー・カレッジで土木工学を学び,のち考古学者の道を歩む。主として,ワシントンのカーネギー研究所によるチチェン・イッツァ遺跡調査をはじめ,多くのマヤ遺跡の調査を手がけた。生粋のフィールド考古学者で,J.E.S.トンプソンと並んでマヤ学の基礎を築いた。…
※「チチェンイッツア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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