ユカタン半島(読み)ユカタンはんとう(英語表記)Yucatán Peninsula

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユカタン半島」の意味・わかりやすい解説

ユカタン半島
ユカタンはんとう
Península de Yucatán

南北アメリカ大陸を結ぶ地峡部の北岸から北東方向へ突出している半島。西のメキシコ湾と東のカリブ海を分け,北東端はユカタン海峡に面する。長さ約 600km,幅約 300km。大部分はメキシコ領であるが,南東部グアテマラベリーズに属する。ほぼ全域が乾燥した薄い土壌におおわれるさんご質および多孔質の石灰岩から成り,南に向って次第に高まる低い台地を形成。降水は大部分地下水となり,表面流は少いが,降水により石灰岩が溶けたところにセノーテと呼ばれる天然の井戸ができている。北西部は高温で乾燥しているが,南および東へ向うにつれてより温潤となり,植生も低木疎林からマホガニーサポジラ (アカテツ科の常緑高木) ,ロッグウッドなどの森林に変る。古くからマヤパンと呼ばれ,マヤ文明の繁栄した地であるが,16世紀なかば以降スペインの植民地となった。しかし副王領のなかでは遠隔の僻地にあたり,その後植民地時代を通じてほとんど重要性をもたなかった。 16世紀前半スペイン人が初めてやってきた頃にはマヤ族の都市の一部はすでに廃虚となっていたが,チチェン・イツァ,ウシュマル,トゥルムなどにはまだマヤ族が住んでおり,これらマヤ族を中心としたインディオはその後長くスペイン支配に抵抗,現在東部のキンタナロー州を中心に住む。主産業は農業で,トウモロコシサトウキビ,タバコ,ワタ,コーヒー,ヘネケン (繊維植物) などを栽培。ほかに林業チクル (サポジラなどから採取するチューインガムの原料) 生産,ハンモック製造なども行われ,数ヵ所で石油が発見されている。また多数のマヤ遺跡があるほか,沿岸には魚釣り,海水浴の適地が多く,近年観光業が発展。北西岸沿いにカンペチェ,メリダなどを経て鉄道と幹線道路が通り,東岸のチェトゥマルにいたる半島横断道路がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユカタン半島」の意味・わかりやすい解説

ユカタン半島
ゆかたんはんとう
Yucatán Peninsula

メキシコ東部にあり、メキシコ湾とカリブ海を分ける半島。大部分はメキシコ領ユカタン州、カンペチェ州、キンタナ・ロー州であり、南部はベリーズとグアテマラに属する。面積は18万平方キロメートル。低平な石灰岩地域で、地表を流れる河川は少なく、地下に浸透した雨水が巨大な鍾乳洞(しょうにゅうどう)をつくりマヤの遺物を残していた所もある。セノーテとよばれる天然の井戸は貴重で、チチェン・イツァー遺跡のセノーテは有名である。北西部は雑木林が広がるが、南東に行くにつれ熱帯雨林となっている。沿岸にはサンゴ礁の島が多く、コスメル島、ムヘレス島、カンクンなどはレジャー基地で、マイアミやメキシコ市と直行便で結ばれている。マヤ文明の地で遺跡が多く、ピラミッドや天文台などが観光資源となっている。19世紀末ごろからヘネケンが風車で揚水して栽培されており、サイザル麻としてユカタン州の州都メリダで集散され、シサル港より輸出される。また、バスケット、ハンモックなどの民芸品に加工され販売される。

[高木秀樹]


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