チャセンシダ(英語表記)maidenhair spleenwort
Asplenium trichomanes L.

改訂新版 世界大百科事典 「チャセンシダ」の意味・わかりやすい解説

チャセンシダ
maidenhair spleenwort
Asplenium trichomanes L.

山林中の岩上や路傍石垣に生えるチャセンシダ科の常緑性シダ。根茎は短く,高さが10~30cmの葉を叢生(そうせい)する。葉柄光沢のある紫褐色で基部に小さな鱗片をつける。葉面は単羽状で,羽片は30対を超えることがある。羽片は短い柄をつけ,卵形,円頭,基部は上側が円い切形で下側はくさび形となり,長さ1.5cmに達する。胞子囊群は脈に沿って長く伸び,包膜におおわれる。日本の各地に生育し,世界の温暖帯に分布していることになっているが,種内に二倍体や四倍体が識別されるほか,単純な構造のものではないようである。葉が枯れると羽片は落ちるが,葉柄と羽軸がいつまでも残ってその様子が茶筅(ちやせん)のようにみえるので,この和名がつけられた。チャセンシダは羽軸の両側に翼がつくが,それに対して近縁イヌチャセンシダではさらに裏面にも翼がついて3翼性となり,チャセンシダほど北には分布しない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャセンシダ」の意味・わかりやすい解説

チャセンシダ
ちゃせんしだ / 茶筅羊歯
maidenhair spleenwort
[学] Asplenium trichomanes L.

チャセンシダ科の常緑性シダ。石垣や岩の割れ目に生える。直立した短い根茎から1回羽状の葉が多数束生し、葉柄、葉軸とも栗(くり)褐色で光沢がある。大きなものは高さ30センチメートルに達する。分布は広く、南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オーストラリアとほとんど全世界にまたがる。中国では地下部を熱病などに薬用する。インドでは全草の煎汁(せんじゅう)を緩下(かんげ)剤、去痰(きょたん)剤とし、葉をいぶした煙を鼻かぜの治療に用いる。近縁種のイヌチャセンシダA. tripteropusとの間に雑種があり、アオチャセンシダとよばれる。

[栗田子郎]


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