ツガ(読み)つが

改訂新版 世界大百科事典 「ツガ」の意味・わかりやすい解説

ツガ (栂)
Japanese hemlock
Tsuga sieboldii Carr.

トガともいう。暖地尾根などに生えるマツ科の常緑高木で,樹冠に密につく細かい枝葉が光を反射し,遠望すると淡緑色に見える。高さ35m,直径1mに達し,太枝が長く伸びて低い円錐形の樹冠をつくる。幹の樹皮灰褐色で亀甲(きつこう)状に裂ける。一年枝は細く上半が垂れ,無毛。冬芽は先が少しとがる。針葉は線形で長さ8~22mm,枝の上面のものはやや短い。葉基部の葉枕(ようちん)は顕著で落葉後もながく残る。4月ごろ小枝の先に雌球花または雄花を単生する。球果褐色に熟し,長楕円形で長さ2~3cm,屈曲する短い柄で垂れ下がる。茨城・福島県境の八溝山から屋久島までの冷温帯南部と暖温帯に分布するが,日本海側では富山・福井・島根県の一部と鬱陵(うつりよう)島にしか見られない。しばしばモミ・ツガ林を形成し,また古生層,中生層地帯の急峻(きゆうしゆん)地形や尾根上に純林をつくることも多い。材は重硬で強く,粉白を帯びた淡褐色色調が上品なので,なげし,鴨居,柱など装飾材として使われる。

 本州中部では標高1500~1600m以上でツガに代わって同属コメツガT.diversifolia Mast.が現れて亜高山帯針葉樹林を構成し,同帯下部では純林をつくることもある。一年枝には短毛があり,冬芽は先が平たい。球果は広卵形で小さく,柄がなくて枝ごと垂れる。青森県岩木山から四国脊梁(せきりよう)山脈までと大分・熊本県境の祖母山にも分布するが,近畿北部と中国地方には産しない。ツガ属は東アジアと北アメリカに10種を産するが,北アメリカ西岸のアメリカツガT.heterophylla Sarg.は高さ70mにもなる巨木で,日本にもベイツガ米栂)の名で建築材として大量に輸入される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツガ」の意味・わかりやすい解説

ツガ
つが / 栂
[学] Tsuga sieboldii Carr.

マツ科(分子系統に基づく分類:マツ科)の常緑針葉高木。トガともいう。大きいものは高さ40メートル、径1.5メートルに達する。樹皮は赤褐色または灰褐色で堅くて厚く、深く縦裂し、不規則な鱗片(りんぺん)となってはげる。一年生枝は細く、黄褐色で毛はなく光沢がある。葉は2列に並び、線形で長さ0.7~2.5センチメートル、幅2~3ミリメートル、先はへこむ。雌雄同株。4月ころ開花する。雄花は枝端に1個ずつつき、長卵形で黄色。雌花は小枝の端に1個ずつつき、長卵形で紫色。球果は急に湾曲した果柄の先に下向きにつき、楕円(だえん)状卵形で長さ2~3センチメートル、径1~1.5センチメートル、10月ころ淡褐色に熟す。種子は倒卵状円形で長い翼がある。海抜10メートルくらいから1800メートルの尾根または尾根に接する斜面などに群生し、福島県以西の本州から九州、および韓国の鬱陵(うつりょう)島に分布する。材は紅色を帯びた淡褐色で木目はまっすぐであるため建築、器具、土木、船舶、車両、楽器などに利用する。また庭園樹にもする。

[林 弥栄 2018年5月21日]

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百科事典マイペディア 「ツガ」の意味・わかりやすい解説

ツガ

マツ科の常緑高木。関東〜九州,朝鮮の山地にはえる。1年枝には毛がない。葉は線形で扁平,先は少しくぼむ。雌雄同株。4月に開花。雄花は黄色,雌花は緑紫色でともに小枝の先に1個ずつつく。果実は楕円状卵形で10月ごろ褐色に熟す。近縁のコメツガは本州〜九州の亜高山帯に群生。小枝には褐色の軟毛がはえ,葉は短い。ともに材は建築,器具,パルプ,樹は庭木に利用。

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