原生動物門、有孔虫目に属する大形有孔虫の一群で、古生代後期の海中に大繁栄した。進化速度が速く、石炭、ペルム(二畳)両紀の約1億年の間に100以上の属、3600以上の種が出現し、標準化石として時代の決定、地層の対比に利用されている。殻が紡錘形(ラグビーのボール状)のものが多いのでこの名があるが、代表的な属の名フズリナFusulinaからフズリナ類ともよばれる。
[藤山家徳]
殻の外形は比較的に単純なものが多いが、内部構造は複雑で、縦・横の軸に沿う断面がないと正確な属種の判定がむずかしい。円筒形、球形、円盤形のものもあるが、外形の多くは紡錘形で、数ミリメートルから2.5センチメートルぐらいのものが普通である。発達は小さな球形の初房から始まり、旋回軸とよばれる軸に巻くようにして成長する。そのほとんどの種が、それまでの殻を包み込むように巻く(包旋回)。この際、巻き貝のように殻壁だけを伸ばすのではなく、外側に、横に長い室を一つずつつくりながら成長していく。この各室の前面の壁は、殻の殻壁の間に仕切り板のように残り、これを隔壁(セプタ)という。殻の横断面では螺旋(らせん)状の殻壁からほぼ一定間隔で下がっている隔壁が多数認められる。隔壁は褶曲(しゅうきょく)するものが多く、この場合、殻の縦断面に複雑な曲線となって現れる。また、縦断面では殻壁の上に中室状の組織が観察されることがある。ネオシュワゲリナ科のものでは、隔壁と直角な方向の副隔壁も生ずるので縦断面にも隔壁が認められる。殻壁は一般に薄い層状構造をもつが、進化したタイプのものにはその内面に多孔質な層(ケリオテーカ)のあるものがあり、断面ではこれが櫛(くし)の歯状にみえる。
[藤山家徳]
紡錘虫は石炭紀の前期に出現し、ペルム紀末近く姿を消すまで海底で大繁栄し、古生代後期の石灰岩中に普通にみいだされ、日本でもしばしば紡錘虫石灰岩を形成している。世界的には、地中海周辺、ウラル山地から中近東、東南アジア、中国、日本、さらに北アメリカ、南アメリカ西部にかけて生息した。日本では南部北上(きたかみ)山地、栃木県佐野市の旧葛生(くずう)町地区、新潟県糸魚川(いといがわ)市青海(おうみ)地区、飛騨(ひだ)山地、岐阜県大垣市赤坂町、岡山県阿哲台(あてつだい)、広島県帝釈峡(たいしゃくきょう)、山口県秋吉台(あきよしだい)、熊本県矢山(ややま)岳などが多産地として知られる。
重要な属としては、石炭紀前期のエオスタフェラ、前期~中期のミレレラ、中期のプロフズリネラ、フズリネラ、フズリナ、石炭紀後期~ペルム紀前期のトリティシテス、ペルム紀前期のシュードシュワゲリナ、前期~後期のシュードフズリナ、シュワゲリナ、パラフズリナ、中期のネオシュワゲリナ、後期のヤベイナ、レピドリナなどがある。
[藤山家徳]
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出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…古生代石炭紀にはじまり,二畳紀末に絶滅した原生動物の一群で,高等有孔虫に属する。名称は紡錘のラテン名fususに由来し,紡錘虫ともよばれる。フズリナは,元来,G.フィッシャー・ド・ワルトハイムが1829年ソ連のモスクワ盆地の上部石炭系に産する米粒様化石(はじめ極微小な頭足類と考えられた)に与えた属名Fusulinaであったが,しだいに近縁の種属がたくさん認められ,群全体を指す語としても用いられるようになった。…
※「紡錘虫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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