紡錘虫(読み)ボウスイチュウ(その他表記)fusulinid

デジタル大辞泉 「紡錘虫」の意味・読み・例文・類語

ぼうすい‐ちゅう〔バウスイ‐〕【紡×錘虫】

有孔虫目の一群原生動物海底にすみ、石炭紀ペルム紀に栄えた。一般に体は紡錘形で、大きさは数ミリから約2.5センチ。石灰質の殻をもち、内部多くの殻室に分かれる。重要な示準化石フズリナ

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精選版 日本国語大辞典 「紡錘虫」の意味・読み・例文・類語

ぼうすい‐ちゅうバウスイ‥【紡錘虫】

  1. 〘 名詞 〙 原生動物に属する複雑な殻を持った化石有孔虫の総称。古生代の後期の石炭紀の後半から二畳紀にかけて暖かい海に栄え、二畳紀末には死滅した。形は球形紡錘形で、殻の中はたくさんの小さな室に仕切られている。岐阜県大垣の赤坂や山口県の秋吉台などは有名な産地。地層の年代を決定する標準化石の一つ。フズリナ。〔英和和英地学字彙(1914)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紡錘虫」の意味・わかりやすい解説

紡錘虫
ぼうすいちゅう
fusulinid
[学] Fusulinida

原生動物門、有孔虫目に属する大形有孔虫の一群で、古生代後期の海中に大繁栄した。進化速度が速く、石炭、ペルム(二畳)両紀の約1億年の間に100以上の属、3600以上の種が出現し、標準化石として時代の決定、地層の対比に利用されている。殻が紡錘形(ラグビーのボール状)のものが多いのでこの名があるが、代表的な属の名フズリナFusulinaからフズリナ類ともよばれる。

[藤山家徳]

殻の構造

殻の外形は比較的に単純なものが多いが、内部構造は複雑で、縦・横の軸に沿う断面がないと正確な属種の判定がむずかしい。円筒形、球形、円盤形のものもあるが、外形の多くは紡錘形で、数ミリメートルから2.5センチメートルぐらいのものが普通である。発達は小さな球形の初房から始まり、旋回軸とよばれる軸に巻くようにして成長する。そのほとんどの種が、それまでの殻を包み込むように巻く(包旋回)。この際、巻き貝のように殻壁だけを伸ばすのではなく、外側に、横に長い室を一つずつつくりながら成長していく。この各室の前面の壁は、殻の殻壁の間に仕切り板のように残り、これを隔壁セプタ)という。殻の横断面では螺旋(らせん)状の殻壁からほぼ一定間隔で下がっている隔壁が多数認められる。隔壁は褶曲(しゅうきょく)するものが多く、この場合、殻の縦断面に複雑な曲線となって現れる。また、縦断面では殻壁の上に中室状の組織が観察されることがある。ネオシュワゲリナ科のものでは、隔壁と直角な方向の副隔壁も生ずるので縦断面にも隔壁が認められる。殻壁は一般に薄い層状構造をもつが、進化したタイプのものにはその内面に多孔質な層(ケリオテーカ)のあるものがあり、断面ではこれが櫛(くし)の歯状にみえる。

[藤山家徳]

分布

紡錘虫は石炭紀の前期に出現し、ペルム紀末近く姿を消すまで海底で大繁栄し、古生代後期の石灰岩中に普通にみいだされ、日本でもしばしば紡錘虫石灰岩を形成している。世界的には、地中海周辺、ウラル山地から中近東、東南アジア、中国、日本、さらに北アメリカ、南アメリカ西部にかけて生息した。日本では南部北上(きたかみ)山地、栃木県佐野市の旧葛生(くずう)町地区、新潟県糸魚川(いといがわ)市青海(おうみ)地区、飛騨(ひだ)山地、岐阜県大垣市赤坂町、岡山県阿哲台(あてつだい)、広島県帝釈峡(たいしゃくきょう)、山口県秋吉台(あきよしだい)、熊本県矢山(ややま)岳などが多産地として知られる。

 重要な属としては、石炭紀前期のエオスタフェラ、前期~中期のミレレラ、中期のプロフズリネラ、フズリネラ、フズリナ、石炭紀後期~ペルム紀前期のトリティシテス、ペルム紀前期のシュードシュワゲリナ、前期~後期のシュードフズリナ、シュワゲリナ、パラフズリナ、中期のネオシュワゲリナ、後期のヤベイナ、レピドリナなどがある。

[藤山家徳]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紡錘虫」の意味・わかりやすい解説

紡錘虫
ぼうすいちゅう
Fusulinid

原生生物界有孔虫門に属する生物。紡錘は,昔,糸を紡ぐときに,糸をまっすぐ伸ばすため先端につるした錘(おもり)で,その形は 2個の円錐の底面を合わせてつけたように見える。この形を紡錘形というが,紡錘虫はほとんど紡錘形をしていることからその名がついた。古生代石炭紀前期の小型有孔虫を先祖とし,後期に急激な形態分化を示し,約 100属 5000種以上に及ぶが,ペルム紀末に絶滅した。大多数の属がほとんどの大陸から産し,広範な海域を生息圏としていた。古生代後期の示準化石として重要である。山口県秋吉,新潟県青海,広島県帝釈などの石灰岩には,この化石を多数含むフズリナ石灰岩がある。石灰岩が風化して紡錘虫の個体が崖下にこぼれて取り出せることがある。栃木県葛生地方では紡錘形の個体が分離していることがあり,米石とか米粒石と呼ばれる。北上高地南部では,数cmの長さにまで発達した細長い紡錘虫が風化分離しているのを松葉石という。紡錘虫は,サンゴ,石灰藻とともに浅海炭酸塩堆積物から発見されるので,示相化石としても有効である。(→有孔虫類

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改訂新版 世界大百科事典 「紡錘虫」の意味・わかりやすい解説

紡錘虫 (ぼうすいちゅう)

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百科事典マイペディア 「紡錘虫」の意味・わかりやすい解説

紡錘虫【ぼうすいちゅう】

フズリナ

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動植物名よみかた辞典 普及版 「紡錘虫」の解説

紡錘虫 (ボウスイチュウ)

動物。化石海生動物

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世界大百科事典(旧版)内の紡錘虫の言及

【フズリナ】より

…古生代石炭紀にはじまり,二畳紀末に絶滅した原生動物の一群で,高等有孔虫に属する。名称は紡錘のラテン名fususに由来し,紡錘虫ともよばれる。フズリナは,元来,G.フィッシャー・ド・ワルトハイムが1829年ソ連のモスクワ盆地の上部石炭系に産する米粒様化石(はじめ極微小な頭足類と考えられた)に与えた属名Fusulinaであったが,しだいに近縁の種属がたくさん認められ,群全体を指す語としても用いられるようになった。…

※「紡錘虫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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