地質時代の大区分の一つ。地質時代は,先カンブリア時代とカンブリア紀以後とに二分され,後者は古い方から古生代,中生代,新生代に区分される。新生代は約6500万年前から現在までの時代で,第三紀と第四紀に分けられる。第三紀は新生代の大部分を占める時代で,新生代の始まりから約200万年前までに当たり,ふつうは前半の古第三紀と後半の新第三紀とに分けられる。さらに,古第三紀は古い方から暁新世,始新世,漸新世に,新第三紀は中新世,鮮新世に細分されている。新生代最後の200万年間が第四紀で,更新世(最新世)と完新世に分けられる。完新世は約1万年前から現在までである。
新生代は現代的な生物の時代で,陸上では哺乳類,鳥類と顕花植物が栄え,前の中生代に多かった爬虫類の恐竜は絶滅している。海中でも,中生代を代表する頭足類のアンモナイト,二枚貝類のサンカクガイやイノケラムスなどが絶滅して,今日も生息している二枚貝のマルスダレガイやバカガイ類,それに巻貝類のエゾバイなどが多くなった。また魚類も,現代的な硬骨魚の時代となる。このほか中生代,新生代の境界では,多くの生物群で同時に著しい変化がおこっている。新生代のなかの生物群の変遷をみると,およそ2500万年前の古第三紀・新第三紀境界における変革はきわめてはげしく,それに比べると第三紀・第四紀境界における変化は大きなものではない。古くは,第四紀を大氷河時代として,あるいは人類が出現した時代として定義してきたが,大規模な氷河が形成されたのは第四紀の後半であり,一方,人類は第三紀末にすでに出現していたことがしだいに明らかとなってきて,これらを特徴として第三紀と第四紀を区分することは意味がなくなった。現在では,第三紀と第四紀の境界は学界の約束によってイタリア北部に分布するカラブリア層の堆積が始まった時と定められている。しかし,この境界部で生物史あるいは気候史上の大きな変化があったわけではないことがわかっている。ただ第四紀は,人類が発展して現在に至る舞台となった時代であり,われわれにとって特別な時代である。
新第三紀と古第三紀の生物界の差異は,哺乳類において特にめだつ。古第三紀には,現在のように形態がそれぞれの生活様式に従って分化していない原始的な種類が多かったが,新第三紀に入るとともに急速な分化がおこって,多様な形態の草食獣や各種の肉食獣が発展して現在に至っている。たとえば,草食獣を代表するウマは,古第三紀中ごろにその祖型が現れたが,キツネほどの大きさで森林にすんでいた。それが長い四肢をもち,草原を走る大型草食獣に進化したのはキク科,イネ科など草本類を主体とする草原が大陸内部に広がった新第三紀以後のことである。ゾウも新第三紀に入るころから著しく長い鼻と牙をもつ大型の動物となった。また,草食獣の発展と並行して,ネコ科やイヌ科で代表されるような狩猟の上手な肉食獣が発展した。
新生代は,地球上に現在みられるような海陸の分布や大山脈の出現した時代であった。新第三紀に入ると,現在ユーラシア大陸の南縁を走るアルプス・ヒマラヤ地帯や,南北アメリカを縦断するコルディレラ・アンデス地帯にはげしい隆起と地層の変形によって山脈が形成された。中生代から北上をはじめていたゴンドワナ大陸が,北のユーラシア大陸と衝突しはじめたのは新第三紀の初期と考えられ,この衝突によってアルプス・ヒマラヤ山系の隆起がおこった。ユーラシア大陸と,アラビア半島,インド半島などとの間にあった広大な海域のテチス海は消滅し,今では山脈の北側の黒海,カスピ海,アラル海などがそのなごりをとどめているにすぎない。現在の地中海はこのテチス海の西端部が残ったものである。コルディレラ,アンデス両山系の隆起は,南北アメリカ大陸の西進にともなって,新生代の間つづいて進行した。とくに第三紀末から第四紀にかけての隆起には,著しいものがある。
新生代は気候の寒冷化の時代である。古第三紀は世界的に温暖な気候が支配的であったが,その後半には南極大陸に氷床が出現し,時代とともに成長した。新第三紀に入ると,その初期に一時世界的な温暖化の時期が認められるが,その後再び寒冷化が進み,第三紀末には北半球の各大陸にも氷河が発達するようになった。そして今から100万年前ごろからそれが大規模な氷床に発展して,いわゆる氷河時代に入る。この100万年間に,氷河が広く発達して寒冷であった氷期と,その間の温暖な間氷期とがおよそ10回もくり返されている。氷期には大量の水が氷河として陸上に固定されたため,海面が現在より100~150mも低下した。それとともに張りつめた氷のためにベーリング海峡が接続し,その陸橋を経由して旧大陸と南北アメリカとの間でさまざまな動物の交流がおこった。日本周辺でも,対馬海峡,津軽海峡などの海峡が陸化して大陸の動物たちが日本列島に移住している。
→地質時代
執筆者:鎮西 清高
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地質時代の大区分の一つで、中生代に続くもっとも新しい地質時代。およそ6600万年前から現在までの時代をいう。新生代に形成された地層を新生界という。新生代は古第三紀、新第三紀および第四紀に三分される。古第三紀は古いほうから暁新世(ぎょうしんせい)、始新世、漸新世に、新第三紀は中新世、鮮新世に、第四紀は更新世、完新世に細分される。非公式ではあるが、日本では古第三紀と新第三紀は第三紀と総称される。新生代は哺乳類(ほにゅうるい)の時代とも表現されるように、中生代末の大形の恐竜の絶滅後、陸上を代表する多種多様な哺乳類の進化発展が著しい。また哺乳類以外の生物でも、現在みられるあらゆる生物群の進化発展で特徴づけられる。ヒマラヤ―アルプスなどの大山脈では褶曲(しゅうきょく)、隆起運動の一連の造山運動を経て、現在みられる地形が形成された。第四紀は第三紀に比べておよそ258万年という短い時間しか経ていないが、人類の出現、発展および氷河時代などで特徴づけられる。新生代の気候は、新第三紀中新世中期までは温暖で、以降寒冷化し、とくに第四紀後半は氷期・間氷期の繰り返しで象徴されるように気候変化の激しい時代であった。現在は温暖な間氷期にあたり、それは第四紀の最後の氷期以来約1万年継続している。この時期を完新世、その前の第四紀を更新世とよんでいる。浮遊性微化石による生層序、古地磁気層序、また、放射性同位体による年代層序などによって遠隔地間の正確な対比が可能となり、新生代の詳しい編年が明らかになりつつある。
[山口寿之 2015年8月19日]
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中生代終了以降から現在までの約6500万年間の地質時代。古い第三紀と新しい第四紀に二分される。動物では哺乳類・軟体類・鳥類・有孔虫類などが進化し,植物では被子植物が繁栄。日本列島は新生代の間にユーラシア大陸から離れて現在の姿になった。
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…その後,中生代末には地球全体がやや低温となった。(2)新生代 第三紀(6500万~200万年前)にも高温な時代があり,始新世から中新世のころには,熱帯は北緯28゜と南緯28゜の間に幅広く広がっていたと考えられている。亜熱帯は北緯40゜と南緯40゜まで達し,両極地方は亜寒帯の気候で,寒帯気候を欠いていた。…
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