ディジタル交換(読み)ディジタルこうかん(その他表記)digital switching

改訂新版 世界大百科事典 「ディジタル交換」の意味・わかりやすい解説

ディジタル交換 (ディジタルこうかん)
digital switching

電話やデータ通信など通信用に使用されている交換機は,図1に示すように通信信号の切換接続を行うスイッチ回路網とそれを制御する制御回路から構成されている。このスイッチ回路網をディジタル回路で構成した交換機をディジタル交換機という。音声信号をパルス符号変調PCM)によりディジタル多重化し,これを交換する方式がディジタル電話交換であり,原信号がデータであるものがディジタルデータ交換である。また画像信号を対象とするディジタル画像交換もある。ディジタル交換とはこれらを総称したものである。

ディジタル交換機を特徴づけるものはスイッチ回路網である。制御回路は一般の電子交換機と本質的な差異はない。図2はディジタルスイッチングの原理を中継交換の例について示したものである。このモデルは3チャンネル多重の2本の入多重回線と2本の出多重回線をもつ簡単な交換機を示しており,ハイウェー(スイッチ回路内の多重回線)上の各チャンネルの時間順序を入れかえる機能をもった時間スイッチ(Tスイッチともいう)と,空間的に電子ゲートを並べてハイウェー相互間でチャンネルごとに切換接続を行う空間スイッチ(Sスイッチ)とから構成されている場合の一例である。入多重回線にはディジタル多重化された呼(個々の通信信号)が入ってくる。いま,入多重回線1から入った呼Aが出多重回線1の第1チャンネルに接続されていたとする。次に入多重回線2から到着した第1チャンネルの呼Xも出多重回線1に接続するものとすると,その第1チャンネルはすでに話中であるので呼Xのチャンネル順序を入れかえなければならない。そこで図2のように時間スイッチでXを例えば第2チャンネルにシフトする。それから時分割ゲートG22を第2チャンネル位相のパルスP2で開閉すれば呼Xは出多重回線1の第2チャンネルに接続できたことになる。他の呼の接続のしかたもまったく同様にして行える。

 以上はごく簡単な一例であるが,実際のディジタル交換機では多重度が数百から1000チャンネル程度の時間スイッチが使用される。上例は時間スイッチと空間スイッチを組み合わせたもので,このような構成をT-S構成というが,大局用電話交換機では多重度を1000チャンネル程度にとり,出側にも時間スイッチをつけたT-S-T構成をとる場合が多い。

図2は電話交換を想定した説明図であるが,もちろんこれをデータ交換用にも使用することができる。しかし,データ交換では電話のような即時性を必要としない場合もあるので,これ以外にもいろいろな交換接続法が考えられる。データ交換方式は回線交換方式蓄積交換方式に分類され,後者はさらにメッセージ交換方式とパケット交換方式に分けられる。

 回線交換方式とは図3に示すように接続すべき入回線と出回線の間に信号伝達路となる接続経路を物理的に設定して交換する方式である。この接続経路はその呼の通信が終了するまで保持されるので,送受両端末間はこの経路を占有して,即時的に自由に情報のやりとりを行うことができる。一般に回線交換方式は会話型通信のように即時性が要求される場合や,情報量が多い長いデータの交換に向いている。なお,電話交換も一般に回線交換方式を採用している。

 蓄積交換方式では送受信端末には直接的な接続経路は設定せず,伝達すべき情報(これを通報,あるいはメッセージという)をいったん交換機内の記憶装置にとり込み,それから中継回路を選んで相手局に転送する交換方式である。情報を蓄積すれば,即時性は失われるが,誤り検出,再送,符号変換,速度変換,プロトコル変換(通信規約の変換),同報通信(複数の端末に同時に送信する),異種端末間通信などの各種通信処理や,情報の中身を変換する情報処理など,いろいろな通信サービスが実行可能になる。また,回線使用能率を高めることもでき,各交換機の独立性が高まるので通信網構成上の柔軟性も向上する。ただし,交換機の制御負担は回線交換に比べるとかなり大きなものになる。

 蓄積交換方式のうちメッセージ交換方式とは,図4に示すように情報蓄積の単位を個々の通報単位にとったものである。これに対し,パケット交換方式とは蓄積転送の単位をパケットと呼ばれるある規格化された長さの情報ユニットにくぎった方式である。短い通報は1個のパケットで伝達される。長いパケットはいくつかのパケットにくぎられ,それぞれ別々に配達される。このように情報伝達形式を規格化すれば,システム構成上の柔軟性が高められるだけでなく,蓄積による遅延やばらつきも最小限に抑えることができる。図5にパケット交換方式の原理図を示す。この図では1個の通報が4個のパケットにくぎられて転送されている場合が示されているが,個々のパケットにはそれぞれあて先がつけられており,一連のパケットは必ずしも同一経路で配達されるとは限らない。したがって中継回数や回線の混みぐあいによっては順序が入れかわって着信することもある。着信局ではパケット番号を見ながらこれを正しく並べかえて着信端末に送出する。これを順序制御という。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のディジタル交換の言及

【電気通信】より

…日本においても72年にD10形自動交換機と呼ばれる蓄積プログラム制御形電子交換機が東京,大阪,名古屋に開局して,ようやく商用化時代に入っていったのである。現在はさらに次代のディジタル交換機の時代に入っているが,これについてはあとで説明する。
[データ通信技術の発達]
 ディジタルコンピューターの起源は,第2次大戦中に高射砲の弾道計算を直接の目的として,アメリカのペンシルベニア大学において研究開発されたENIAC(electronic numerical integrator and computer)と呼ばれる電子管式ディジタル計算機といわれている。…

※「ディジタル交換」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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