日本大百科全書(ニッポニカ) 「デュシャン・ビヨン」の意味・わかりやすい解説
デュシャン・ビヨン
でゅしゃんびよん
Raymond Duchamp-Villon
(1876―1918)
フランスの彫刻家。ノルマンディー地方ウール県ダンビルの生まれ。ジャック・ビヨンを兄とし、マルセル・デュシャンを弟とする。1894年、医学の勉強のためにパリに出るが、医学を捨てて彫刻の道を歩む。初めロダンの影響を強く受けていたが、しだいにそこから抜け出し、1911年の『ボードレールの頭部像』では、簡潔な造形のなかにこの詩人の近代性を鮮やかに浮かび上がらせ、ロダン的表現からの完全な離脱を示した。このころ、ピュトーでは兄ジャック・ビヨンを中心にキュビスム系統の芸術家が集まっており、彼もその議論に加わるとともに、翌12年の「セクシオン・ドール」展に参加した。14年には「馬」の連作を手がけ、そこではしだいに写実的イメージが姿を消して、馬が機械装置に転化してゆく過程が示される。第一次世界大戦に補助医として従軍するが、伝染病のためカンヌで没した。
[大森達次]