デーナ(読み)でーな(その他表記)James Dwight Dana

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デーナ」の意味・わかりやすい解説

デーナ(James Dwight Dana)
でーな
James Dwight Dana
(1813―1895)

アメリカの地質・鉱物学者。ニューヨーク州ユーティカに生まれる。1833年エール大学を卒業。海軍兵学校で数学の教官をしたのち、エール大学でシリマンBenjamin Silliman(1779―1864)の助手を務める。その間、ウィルクスCharles Wilkes(1798―1877)の率いるアメリカ探検隊に加わり太平洋を巡航し(1838~1842)、地質・鉱物学者として認められた。1856年シリマンの後を継いでエール大学の自然史、地質学の教授となり、1892年までその地位にあった。彼の名声を高めた著書は『鉱物学体系』System of Mineralogyで、1837年の初版から1868年の5版まで刊行された。この本は息子のエドワードEdward Salisbury Dana(1849―1935)に引き継がれ、1892年に6版が刊行された。他の主著として『地質学便覧』Manual of Geology、『鉱物学便覧』Manual of Mineralogyなどがある。エドワードも著名な鉱物学者で、エール大学の自然史や物理学の教授を務めた。

[松原 聰]


デーナ(Charles Anderson Dana)
でーな
Charles Anderson Dana
(1819―1897)

アメリカのジャーナリスト。ニュー・ハンプシャー州に生まれ、ハーバード大学を卒業。1841年から理想主義的なブルック農場で働いたが、1847年新聞界に入り、翌1848年ヨーロッパの革命運動を報道、1849年『ニューヨーク・トリビューン』紙の編集局長となって奴隷解放運動を応援した。1868年には『ニューヨーク・サン』紙の編集長となって、一般大衆向けの紙面をつくることを心がけ、人間性に訴えるニュースを報道して成功した。報道面ではこの方針は「新聞人の新聞」と評されるほどであったが、論調はしだいに保守化し、資本主義を支持するに至った。しかし、文章を尊重する編集方針は注目され、これをまねる編集者が多かった。

[伊藤慎一]

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改訂新版 世界大百科事典 「デーナ」の意味・わかりやすい解説

デーナ
James Dwight Dana
生没年:1813-95

アメリカの地質学者,鉱物学者。ニューヨーク州で商人の子として生まれ,イェール大学でB.シリマンに自然史学を学び,地質学と鉱物学に進む。卒業後,海軍兵学校の教師として練習船に乗り,ヨーロッパをまわり,ベスビオ火山などを見る。帰国後《鉱物学大系》(1837)を出版し,鉱物学者として知られるようになる。また,イェール大学に勤め,1856年から教授となる。1838年からウィルクス探検隊に地質学者として参加し,世界をまわり,とくに太平洋で火山島やサンゴ礁を研究,また動物の研究も行い,とくにサンゴに注目した。太平洋での観察をもとに,サンゴ礁の成因について論じ,当時C.ダーウィンが沈下説を唱えていたのに対し,隆起することもあると主張した。73年J.ホールの説をうけて〈地向斜〉の概念を提唱,収縮説にもとづき,造山運動と大陸の拡大を論じた。鉱物学の著作は多く,長く読まれた。
執筆者:


デーナ
Richard Henry Dana,Jr.
生没年:1815-82

アメリカの作家,弁護士,政治家。ハーバード大学で海洋法を専攻したが,学業を中断して船乗りになり,その航海の経験をもとに《水夫としての2年間Two Years before the Mast》(1840)を書いた。これはアメリカ海洋小説の古典と目されており,《白鯨》の著者メルビルもこの作品に啓発された。デーナはまた海員の権利の確立と奴隷解放運動にも力を尽くした。大の旅行家で,世界一周旅行の途次,日本にも立ち寄っている。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デーナ」の意味・わかりやすい解説

デーナ
Dana, James Dwight

[生]1813.2.12. ニューヨーク,ユチカ
[没]1895.4.14. ニューヘーブン
アメリカの鉱物学者,地質学者。エール大学卒業後,海軍兵学校教官 (1833) ,エール大学助手 (36) を経てエール大学教授 (56) 。アメリカ科学振興協会および地質学会の会長,科学アカデミー創立会員。 20歳代で結晶面記号法を考案し (34) ,またヨーロッパ各地や南太平洋をめぐり,1873年に,造山運動の基本的概念となっている地向斜,地背斜術語を J.ホールの研究に基づいて提唱し,地球収縮説を取入れて地向斜の形成を論じた。海洋動物の研究にもすぐれた業績を残したほか,『アメリカン・ジャーナル・オブ・サイエンス』誌の編集者としても知られる。著書は『鉱物学体系』A System of Mineralogy (37) ほか多数。

デーナ
Dana, Richard Henry, Jr.

[生]1815.8.1. マサチューセッツケンブリッジ
[没]1882.1.6. ローマ
アメリカの小説家,弁護士。ハーバード大学在学中,眼病をわずらい,視力を回復する目的で 1834年水夫となって,ボストンからホーン岬を回ってカリフォルニアに向う航海に出た。 36年ハーバード大学に再入学して翌年卒業。同大学で教鞭をとったのち,40年法曹界に入り,特に「水夫のための弁護士」として活躍。先の航海日誌をもとに,水夫生活の実情を克明に伝える『水夫としての2年間』 Two Years Before the Mast (40) を書き,一躍有名になった。『水夫のための手引』 The Seaman's Friend (41) は,水夫のための法律解説書として有名。

デーナ
Dana, Francis

[生]1743.6.13. マサチューセッツ,チャールズタウン
[没]1811.4.25. マサチューセッツ
アメリカの法律家,外交官。連合規約の署名者。独立革命前夜の 1774~75年イギリスに滞在し植民地とイギリスとの和解に努力したが,76年以後は革命派の指導的人物となった。大陸会議代表 (1776~78) を経て,79年パリ平和会議の全権特使 J.アダムズの秘書となり,翌年ロシアにおもむきアメリカ承認を求める運動をしたが失敗。その後マサチューセッツ州最高裁判所陪席判事 (85~1806) ,同長官 (1791~1806) を歴任。

デーナ
Dana, Charles Anderson

[生]1819.8.8. ニューハンプシャー,ヒンズデール
[没]1897.10.17. ニューヨーク,グレンコーブ
アメリカの新聞編集者,社会改革者。 1841年ハーバード大学中退。同年9月から 46年3月までユートピア的実験農場ブルック・ファームに住む。のち『ニューヨーク・トリビューン』紙の編集に加わり (1849~62) ,また 68年から死ぬまで『ニューヨーク・サン』紙の経営陣に加わってその主筆をつとめた。

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百科事典マイペディア 「デーナ」の意味・わかりやすい解説

デーナ

米国の鉱物学・地質学者。イェール大学卒,同大学教授。研究活動は多方面にわたるが1837年記載鉱物学の大著《鉱物学体系》を発表し,鉱物分類の基礎を確立。サンゴ礁の成因研究,地向斜の概念の提唱,地球収縮説による地向斜の形成論などの業績がある。
→関連項目地背斜

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世界大百科事典(旧版)内のデーナの言及

【サンゴ礁(珊瑚礁)】より

…かつてC.ダーウィンは1842年にサンゴ礁に裾礁,堡礁,環礁と三つの基本型を指摘し,陸地の沈降,すなわち海洋底の沈降にともない,裾礁から堡礁,さらに環礁へと順次移化していったとする沈降説subsidence theoryを唱えた。続いてJ.D.デーナは53年にサンゴ礁背後の島の海岸線の屈曲と溺れ谷の存在は沈降説の地形的証拠であるとした。一方,R.A.デーリーは1910‐34年にかけて,氷河の消長と海水準変化は密接な関係があり,氷期の氷床の発達は60~90mほどの海水準の低下をもたらして活発な海食による泥質の堆積物を形成し,環礁の礁湖底の平たんさと水深の一様さは海水準低下の地形証拠であるとした。…

【始生代】より

…地質時代の年代区分の一つで,先カンブリア時代を二つに分けたときの前期をいう。1872年,J.D.デーナがカンブリア紀より前の片麻岩や花コウ岩からなる地質系統の形成年代を太古代とした。20世紀に入ってから,古生代,中生代,新生代の地史区分にならって,先カンブリア時代は原生代,始生代に二分され,太古代は始生代の同義語となった。…

※「デーナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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