ブルック・ファーム(その他表記)Brook Farm

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブルック・ファーム」の意味・わかりやすい解説

ブルック・ファーム
Brook Farm

別名農業と教育協会」 Institute of Agriculture and Education。アメリカニューイングランドの理想主義者たちによってマサチューセッツ州ウェストロクスベリーで 1841~47年に営まれたユートピア的共同体。ユニテリアン派牧師の R.リプリーによって組織され,彼の妻ソフィア・ドナの協力を受けた。契約書によれば,ブルック・ファームは,(1) 思想家と労働者の結合,(2) 精神的自由の保障,(3) 自由で教養のある人々から成る社会の準備を目的とした。1株を購入することによって自動的に会員となり,利潤が出た場合は,労働日数に応じて株主に分配された。ファームは会員男女に対して1労働日 (肉体的もしくは精神的労働) ごとに1ドルを支給し,衣食住をほぼ原価で提供した。 C.ディナ,N.ホーソーンが創立メンバーとして農業経営を指導した。ファームの教育機関は特色のあるものであり,幼児学校,小学校,大学予備コースを通じて「生徒と教師の間の完全に自由な関係」の確立を目指した。学校には定められた授業時間はなく,生徒は1日2~3時間の肉体労働を課された。ファームの経営は次第に困難となり,共同体はのちにはフーリエ主義的なものへと転じて解散し,49年土地と建物は売却された。その存続期間は短かったが,ブルック・ファームは 19世紀前半にアメリカで数多く試みられた共同体のなかで最も有名な存在であった。ホーソーンの『ブライズデール・ロマンス』 The Blithedale Romance (1852) は,ブルック・ファームの経験を創作化したものである。

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改訂新版 世界大百科事典 「ブルック・ファーム」の意味・わかりやすい解説

ブルック・ファーム
Brook Farm

アメリカのトランセンデンタリズムの信奉者が1841年4月にボストン郊外のウェスト・ロクスベリーに開設した理想主義農場。のちC.フーリエの影響をうけて〈ファランクスPhalanx〉とも呼ばれた。指導者リプリーGeorge Ripley(1802-80)の言葉を借りると,この事業の目的は〈頭と手の労働の間に現在よりも自然な統一を確保すること〉だったが,早くも46年には財政難から破局を迎えることになる。なおホーソーンの長編《ブライズデール・ロマンス》はこの農場での彼自身の体験を素材にしている。
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世界大百科事典(旧版)内のブルック・ファームの言及

【ダナ】より

…ニューハンプシャー生れ。1839年ハーバード大学に入るが,学位はとらず,ユートピア・コミュニティ〈ブルック・ファーム〉に参加,機関紙《ハービンガー》の編集にたずさわった。47年グリーリーとの関係で《ニューヨーク・トリビューン》に入社,ヨーロッパに渡って〈48年革命〉の記事を送った。…

【トランセンデンタリズム】より

…〈自然は精神の象徴である〉というエマソンの言葉は,物質界と精神界(神)との照応関係の認識から出ており,この象徴論は19世紀中期のアメリカ文学黄金時代の作家たちに影響を及ぼし,アメリカ独自の象徴主義文学の源泉になったといえる。超越主義の社会改革運動は,リプリーが主宰したボストン郊外における共同生活団ブルック・ファームに見られるが,この生活団に参加したN.ホーソーンは,彼らの理想社会の夢がはかなく破れ去ったてんまつを小説化した。A.B.オールコットとその家族を中心とした寒村ハーバードのフルートランズFruitlands(菜食主義生活団。…

※「ブルック・ファーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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