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地向斜 ちこうしゃgeosyncline

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

地向斜
ちこうしゃ
geosyncline

地球表面の大規模な沈降地帯。地向斜の概念は,アパラチア山脈の褶曲した古生層を研究した J.ホール (1859) によって導入された。ホールによると地向斜では浅海性の堆積物が厚く堆積し,その重みでたわみが生じ,その結果たわみの向斜軸に沿って褶曲ができ,さらにその底部で火成岩の貫入や変成作用が起り,その後,隆起が生じ,山脈が形成されたとする。しかし,地向斜の名称を与えたのは,J.デーナ (73) である。その後,地向斜は大褶曲山脈ができる造山輪廻の主要な変動の場として重視されるようになった。地向斜の成因については諸説があるが,マントル対流説によると,大陸の外側で,マントル対流の地下へもぐる部分では海底が引張られて沈降すると説明され,日本海溝などは堆積物の少い地向斜とみる考えもある。

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デジタル大辞泉の解説

ち‐こうしゃ〔‐カウシヤ〕【地向斜】

長期にわたって沈降を続け、著しく厚い地層が堆積している細長い地域。その後、造山帯となると考えられた。

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百科事典マイペディアの解説

地向斜【ちこうしゃ】

地向斜―造山論において,地質時代の長期にわたって沈降を続け,海底に沈み,特有の厚い堆積層が形成されるとされた細長い地域。一般に地向斜は沈降のあと造山運動を受け褶曲(しゅうきょく)山脈となって隆起し,さらに浸食されて低平化し,安定化して大陸に転化していくと考えられた。
→関連項目カレドニア造山運動造山帯造山輪廻地背斜バリスカン造山運動フリッシュ本州地向斜

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岩石学辞典の解説

地向斜

ホールは1859年に,地殻が長期間連続して沈降した地域に,堆積物と火山性堆積物が周辺よりも著しく厚く堆積し褶曲して山脈が形成されたことを示唆した[Hall : 1859].このような地域をデーナは1876年に地向斜(geosynclinals)と命名し,この語は後に地向斜(geosynclines)と改められた[Dana : 1873, Aubouin : 1969].地向斜に堆積した堆積物などをすべて含めていう場合がある.普通は地向斜は日本列島のような大規模なものについていわれる[木村ほか : 1973].

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世界大百科事典 第2版の解説

ちこうしゃ【地向斜 geosyncline】

膨大な量の堆積物を形成する深い沈降地帯。造山帯の前身としての地向斜のこのような概念は,1857年J.ホールによってはじめて提唱されたが,彼はこれを〈巨大な向斜軸〉と呼んだ。1873年J.D.デーナは,北アメリカ東部のアパラチア山脈の研究から,この地域が長期間にわたって継続した地殻の〈地向斜性〉湾曲により,厚い古生代の堆積物を蓄積し,最後には破壊して断層,褶曲,その他の変動を生ずるに至ったと述べた。ホール(1859)は,アパラチア地域の堆積物が浅海成のものを主体とすることから,この堆積域,つまり地向斜は絶えず沈降し続けたものと考えた。

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大辞林 第三版の解説

ちこうしゃ【地向斜】

地殻上に生じた帯状の沈降地域。地質時代の長い期間にわたって沈降を続け、厚い地層を堆積し続けた所で、その後、造山帯を形成したと考えられた。 ⇔ 地背斜

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

地向斜
ちこうしゃ
geosyncline

変動する細長い堆積(たいせき)区で、その周辺よりも地層が厚く堆積している区域。堆積ののちに引き続いておこる造山運動により、褶曲(しゅうきょく)帯を形成することがある。地向斜は通例、長軸が日本列島程度以上のスケールの堆積区域に用いられる。地向斜が形成される際には、このようなスケールの区域が地形的に凹地をなし、両側または片側の陸地から膨大な砕屑(さいせつ)物が供給される。一つの地向斜は一般に1000万年以上の期間にわたって存在し、その間、連続的または断続的変動により地向斜縁辺部および内部において地形がさまざまに変化する。大スケールの地向斜は、その内部にいくつもの浅海域や陸域をもち、その堆積物も多様である。[村田明広]

地向斜の分類

地向斜の概念は1859年にアメリカのホールJ. Hallによって北米アパラチア山脈において初めて提唱され、1873年にアメリカのデーナJ. D. Danaによって地向斜geosynclineのことばが用いられた。地向斜の概念は、研究者の意見の相違により多くの異なる分類方法がとられている。これは、アパラチア地向斜、アルプス地向斜など異なった地域で別々に研究されたことや、それぞれの研究者が堆積物、火成活動、造山運動など、どの点に主眼を置いて研究したかの結果である。
 ドイツのシュティレH. Stille(1936)は、地向斜がのちに著しい褶曲運動を伴うアルプス型造山運動を受けたか、あるいは褶曲運動を伴わないドイツ型造山運動を受けたかで、正地向斜と準(パラ)地向斜とに区分した。またシュティレ(1940)とケイM. Kay(1951)は、地向斜を、海底火山活動(玄武岩質‐安山岩質)を伴うユー地向斜と、それをほとんど伴わないミオ地向斜とに区分した。ユー地向斜は海洋地殻の上に生じたと考えられる場合が多いが、ユー地向斜の地下に大陸地殻が存在したと考えられる場合も少なくない。アパラチア地向斜のようにユー地向斜とミオ地向斜とが同時期に並列して存在することもあれば、ユー地向斜がのちにミオ地向斜に転化することもある。また地向斜は時代によって、ある一方向へ移動する極性があることが知られている。[村田明広]

地向斜の堆積物

地向斜に特徴的な堆積物は、1万メートルにも及ぶ砂岩・泥岩・混濁流堆積物(タービダイト)やチャートなどであり、ユー地向斜の場合これに玄武岩質海底火山岩類が加わり、ミオ地向斜においては石灰岩が加わる。このような堆積相を地向斜相という。また地向斜に堆積した地層の集合体を地向斜堆積体または地向斜プリズムとよぶ。[村田明広]

地向斜理論の衰退

地向斜という用語は、プレートテクトニクス説の登場により、現在では使われなくなった。プレートテクトニクス説では、地向斜とよばれた堆積区は、大陸地殻が二つに割れて分離移動し、それらの間の新しい海洋地殻の上に堆積盆が生じたと考えられる場合や、現在の日本列島周辺に認められるように、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むことに伴って、海溝・前弧海盆・背弧海盆などの堆積盆が形成されたとする場合がある。
 また、かつて地向斜堆積物とされたものの多くは、大洋底に堆積したチャートや、海山の玄武岩質火山岩類・石灰岩などが、海溝で陸源の混濁流(乱泥流)堆積物などと混ざり合って大陸側に付加されたもの(付加堆積物)と考えられている。西南日本内帯の美濃(みの)‐丹波(たんば)帯や、外帯の四万十(しまんと)帯の地層は付加堆積物の代表例とされている。[村田明広]

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